そばにいさせて 4【怪盗キッド】

カボチャ 6 ページ27

楽屋に着くと、中でラストシーンを待っている他の役者が私たちをみる。


すると少しして、ヒロイン役の麗子さんが楽屋に入ってきた。




「あなた何考えてんの！？劇を台無しにする気！？」




楽屋に戻って早々、麗子さんの怒鳴り声が鳴り響く。



「そ、そんなつもりは……」




恵さんが辛そうな表情で訴える。




「めざわりよあなた……早く消えてちょうだい！！」






ここで私の堪忍袋の緒が切れた。





「ちょっと！そんな言い方ないじゃないですか！急にアドリブを入れる方が酷いですよ！」



「役者ならそれぐらい出来て当然よ！ど素人が口を挟まないでちょうだい！」



「確かに素人ですが、そんなに強くあたらなくてもいいじゃないですか！」




あーーー殴りてぇぇー！！！！！
1発！1発だけ殴らせてくれ！！！



という気持ちが心の奥から湧き上がってくる。




「何も知らないひよっこがうるさいわね！恵と同じで口先だけの人が多すぎるのよ！」



ｶｯﾁｰﾝ




私は目を見開き、拳を握った。

そして腕を上げる。




その瞬間。



ｶﾞﾁｬｯ


「麗子さん、出番ですよー！」



スタッフが麗子さんを呼びに来た。

麗子さんは鼻を鳴らし、楽屋から出ていく。
私の拳は宙に浮いたあと、下へと下がった。



恵さんは目から涙をポロポロと流す。


すると他の役者さんが恵さんに近づき励ました。



「気にすることないよ！」

「恵は悪くないんだからさ！」



1人の役者さんが恵さんのおしりを軽く叩く。


「ほら！元気だして！」

「じきにラストシーンよ！舞台裏に行きましょ！」




「……はい！」

みんなに励まされ、恵さんは涙を拭き笑顔を見せる。

私は腰に手をあて、恵さんに話しかけた。


「恵さん！次あの人が変な嫌がらせしたら、ナレーションであることない事いってやりますからね！」




「……うん！ありがとう！」



皆ぞろぞろと楽屋から出ていく。

私らこっそりカバンから小型イヤホンを取りだし、片耳にはめた。



そして小声でつぶやく。



「ラストシーン入ります」



《おっけー》


快斗の声が聞こえた。

そう、ラストシーンが私たちの本番なのだ。



《なぁ、A》



「なに？」



《彼女を……輝せたくねぇか？》



「……奇遇だね。私も同じこと考えてた」




そして私は口角を上げ、目を細めた。

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