そばにいさせて 4【怪盗キッド】

カボチャ 5 ページ26

「ーーーーーここは中世ヨーロッパ……。敵対する国同士に生まれた王子と王女。2人の運命はいかに……」





数分間、いつも以上に集中し台本を読み上げる。

セリフが終わると、スタッフが私のマイクの電源を切った。




「お疲れ様です。次の出番まで休憩してもらって大丈夫ですよ」




スタッフはそう言うと、机に新しいお茶を置いて去っていく。

私は舞台袖から劇を見る。




(お、恵さんの出番だ！)



恵さんは不安な顔をして声を出す。



「我が国とガイア国は敵同士！！それが知れたらどんな目にあうか……」




召使い役の恵さんが、ヒロイン役の麗子さんを説得するシーンだ。

結構迫力がある。


すると麗子さんは目をきつくして、恵さんを睨んだ。



「じゃあ、あなたは私の世界一の美しさを、一生この国に閉じ込めておけばいいとおっしゃるの？」



(……！？このセリフ、どこにも書いてないぞ！？)



私は大本をペラペラと捲り、前後のシーンを探すが全く同じセリフが見つからなかった。


きっと彼女の嫌がらせだろう……。





恵さんがあたふたしていると、麗子さんは腕を組む。



「もういいわ、さがりなさい」



「は、はい、あっ！」



恵さんは後ろにあった台座にぶつかってしまい、花瓶と一緒に倒れる。



ｶﾞｼｬﾝｯ!!




会場はドジっ子なシーンだと思い、笑いが起きた。

私は事情を知っているため、モヤッとしてしまう。




恵さんが縮こまりながら舞台袖に戻ってきた。

私は直ぐにかけより、肩に手を置く。





彼女は無言のまま目に涙をためた。



そしてゆっくりと楽屋に歩き出す。
私も彼女の歩幅に合わせ、歩いた。

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