そばにいさせて 4【怪盗キッド】

今日のハイライト 2 ページ16

夜の冷たい風が私の頬を撫でる。



私は白い衣装を身にまとい、屋上に立った。

バサバサとマントが風でなびく音が聞こえる。



そして下からは沢山のファンが集まっており、キッドコールが始まっていた。




目をそっと閉じ、心を落ち着かせるように呟く。




「……大丈夫。大丈夫だよ、A」



以前壊れた変声機を修理して、首元に付けているため、私の声ではなく快斗の声が聞こえる形になっていた。


少し遠くからヘリの音が空を響かせる。





《何かあったらすぐに知らせるんだぞ》



片耳に付けた小型イヤホンから快斗の声が聞こえる。

咳は少なくなったが、まだ微熱があるということで家から指示をすることになった。




「……快斗」



《どうした》



「焼肉……食べたいな」



《食べ放題だろ？わーってるよ》



「やったぜ……！」




私は深呼吸をして目を開く。


片手に持ったボタンを胸の前に出す。





《予告まで5秒前》



手が少し震える。




《4》



息を飲み込む。




《3》



心臓の音がかすかに聞こえる。


《2》




そしてゆっくりと両手を広げ



《1》




息を大きく吸って、みんなに見える形で1歩前に出た。



《0！！》





「Ladies and Gentlemen!!!」


私が声を発した瞬間、ファンたちの歓喜の声があがる。
キッドコールは鳴り止まない。





私は深く帽子を被り直し、続けて話した。


「今夜は今までと、一味違ったショーをお見せしましょう……!!!」




そして片手のスイッチを押す。



その瞬間、周りの建物全ての電源が落とされる。

辺り一面暗闇に包まれた。




驚いたのか、悲鳴が所々聞こえる。


それと同時に屋上の扉が思いっきり開けられた。

沢山の警察官が私を見て指を指す。



「キッドを捕まえろ！！！」



警察官が一斉に走ってきた。

私は不敵な笑みを浮かべながら手を振る。



そして後ろに体重をかけ、ビルから落ちていった……。

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