刻まれた運命を呪う ページ22
一瞬の出来事だった。
気付いたら、瞬きをしたら、
本当にそのぐらい瞬間的な出来事だった。
気づけば直樹は佐久間と翔太に胸ぐらを掴まれて壁に押し付けられていた。
顔は見えていないけれど。あんなに怒っている2人は初めて見た。
え、さっきまで後輩と戯れていたし、
眠る体勢に入ってたよね?
と場違いにも考えてしまうほど。
「「もう一回言ってみろよ」」
2人が手にグッと力を入れている間に、騒動を聞きつけたギャラリーが集まってくる。
まずい。
『佐久間、翔太。手は出しちゃ駄目、あとは私が』
「Aさん、待って。2人とも、手を放して」
めめが私を通り越して
今にも殴りかかりそうな2人の肩を叩く。
「直樹さん、俺はラウールと勉強してただけです。席はたまたま空いてたからAさんと同席させて貰ったんです」
そうかよ、とめめを睨みつけて人混みを掻き分けて自室に戻る直樹。
あぁ、吐き気がする。
自分を棚にあげる思想、自分を正しいとする姿
私の大嫌いな私の一族そのものだ。
それが自分の血にもしっかりと色濃く混ざっているのだと思うと、とても吐き気がする。
「なんで止めた」
「佐久間くんクィディッチ前に暴力沙汰はダメです」
立ちすくむ佐久間とは逆に翔太は先程いたソファーに戻っている。
「まじでどうでもいい。誰が純血で誰がそうじゃ無いか、純血ならどうなのか、俺分かんねえし覚える気もねぇ」
「そうですね、俺もそうです」
ゾッとするほど低い2人の声に平然と答えるめめ。
俺が穢れた血なら、純血は錆びた血ですかね。
あ、ここに居る皆、錆びてますね。
そう返す彼は、いったい何歳なんだろうか。
「Aさん、遮ってすみません」
私のせいだ。
私が結晶家じゃなかったら、
私がみんなと仲良くしなければ
こんな事にならなかったのに。
それに、いつも守られてばかりだ。
じわぁっと目の前がぼやけていく。
「Aさんのせいじゃ、無いです。」
ここにふっかさん居なくよかったぁ、
と言うラウールの声と
ふっか居たら、あいつ今頃学校の塔から吊し上げられてただろうな
なんて言う不貞腐れた声を聞きながら
ボタボタと涙が重力のまま落ちていく。
翔太が優しく私の頭に手を置いてくれるから
余計に涙が止まらない。
あぁ、本当に吐き気がする。
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浅野(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!頑張ってください (2023年3月15日 12時) (レス) id: 7738234d33 (このIDを非表示/違反報告)
菫(プロフ) - 素敵な世界観で一気に読んでしまいました!続きを楽しみにしています。 (2021年7月1日 12時) (レス) id: 53672676a1 (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - めっちゃ面白くて今まで読んで、評価しかしたことなかったんですが、初めて感想書かせて頂きました!お時間あればぜひ続きが読みたいです! (2021年4月16日 4時) (レス) id: fb06234f32 (このIDを非表示/違反報告)
薫乃(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です!!更新楽しみにしてます! (2021年2月22日 20時) (レス) id: 58fa025e8e (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - Abbさん» ありがとうございますー!とてもとても嬉しいです!魔法の世界について私も詳しい訳ではないので間違いなどかればご指摘ください! (2021年1月18日 1時) (レス) id: 9a3bbadc3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りえ | 作成日時:2020年12月22日 15時