吐息という賄賂 ページ12
朝日が登る時間は早く
木漏れ日でさえ、じんわりと汗をかく季節。
私は最悪のキスで目を覚ます。
「おはよう」
『…おはよ直樹』
真っ白なシーツのそばに散らばった自分の服をみて
昨日の夜は、お付き合いをしている彼と過ごしたことを思い出す。
2年生開始当初から、珍しくまだ続いている。
3ヶ月続くのが久しぶりなんて、ちょっとスパンを見直す必要があるかもな、と寝ぼけた頭で反省。
『ん、ちょっと、ダメ』
「いいじゃん、もう一回しよ?俺、Aとするのめっちゃ好き」
素肌に這う手が気持ち悪くて、咄嗟に身じろぎをする
彼は悪くない。
だって私達、付き合ってるんだから。
確かに彼との夜に全く不満はないけれど
それ以上の満足感も何もない。
そこに、愛は無いのだから。
乱雑に落ちた服を手に取って、直樹の腕をすり抜ける
『早くしないと朝ごはん食べれなくなっちゃう』
「それもそうだな」
じゃあまた今夜、と残して私の部屋から出てくる後ろ姿にゆっくりと手を振る。
いつもはすぐお別れする(佐久間には"最長ワンシーズン制の彼氏"と言われている)彼氏がまだ続いているのには理由がある。
相手に先手を取られているからだ。
数週間前、母から
"新しい彼のお家柄、とっても素敵ね!
お父様の仕事相手のお家よ!
直樹さんからお手紙を頂いたわ!"
と音声付きの手紙が届いた。最悪。
聞き終わった瞬間に燃やしたおかげで、少し教科書の端が焦げたのは内緒だ。
直樹は純血主義。そして家はお父様の近辺にいる関係者。母親ともコネクションを作り始めた。
人選ミスったかも。
私の行動が筒抜けだと気づいたのは、私が箒から落ちた事が次の日にはバレていたことで異変に気づいた。
"直樹さんがわざわざ連絡くれたのよ!"
余計なことを。危うく先生の首が物理的に飛んでいくところだったと言うのに。
私の行動が家に筒抜けになるのは、避けたい。
だから夜、形だけ愛し合いながら
『両親には心配かけたく無いの』
『次の休みには成長した姿で驚かせたくて』
『私達だけの秘密でしょ?』
と、目を合わせながらお願いをするのがルーティンになっている。
はぁ、とため息をついて、部屋から談話室に出ると
スリザリンのSnowManチームのチェス中に出くわした。
「「「「『あ』」」」」
「さっき直樹出てきたけど、まだ続いてんだね。昨夜はお楽しみのようで」
『まぁね』
「お前、めめとラウは手出すなよ」
『ご心配なく』
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浅野(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!頑張ってください (2023年3月15日 12時) (レス) id: 7738234d33 (このIDを非表示/違反報告)
菫(プロフ) - 素敵な世界観で一気に読んでしまいました!続きを楽しみにしています。 (2021年7月1日 12時) (レス) id: 53672676a1 (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - めっちゃ面白くて今まで読んで、評価しかしたことなかったんですが、初めて感想書かせて頂きました!お時間あればぜひ続きが読みたいです! (2021年4月16日 4時) (レス) id: fb06234f32 (このIDを非表示/違反報告)
薫乃(プロフ) - めちゃくちゃ好みのお話です!!更新楽しみにしてます! (2021年2月22日 20時) (レス) id: 58fa025e8e (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - Abbさん» ありがとうございますー!とてもとても嬉しいです!魔法の世界について私も詳しい訳ではないので間違いなどかればご指摘ください! (2021年1月18日 1時) (レス) id: 9a3bbadc3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りえ | 作成日時:2020年12月22日 15時