甘く、深く** ページ9
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悪気の無い悪魔っていうのは現実にも居るのだと確信した。今俺の目の前に居るのが其れだと思う。さっきから胸の奥が痛いし苦しい。頭では其れ以上行くなと止められて居るのにもう戻れる気がしなかった。身体に触れたくて、其の腕を捕まえたくて、感情を揺さぶりたくて、こんなの止められる訳が無かった。Aが俺の服の裾をきゅっと握った。其の感覚が伝わって来て必死に止めて居たものがぷつりと切れる音が聞こえた。
『 夜久さ……っ！？』
Aが俺の名前を呼ぶ声が流れる様に消えて行く。後頭部に添えて居た手に力を込めて少し引き寄せ名前を呼ぶ愛しい其れへ自身の唇を押し付けた。
『 んっ……んん…っ 』
「 っ…は… 」
駄目だ離れろと脳から指示が出ているのに柔らかいAの唇が其の指示を打ち消して行く。少ししてゆっくり唇を離してAの瞳を捕えると、頬を赤く染め少し涙が溜まる瞳にとろんとした表情をしていた。其れにまた身体が惹き込まれる。
「 …っ…A、嫌なら殴って良いから… 」
『 は…えっ…… 』
もう一度其の柔らかい唇に触れる。俺の助言はAに届いたのか分から無いが俺の服を握った儘抵抗もせず、唯受け入れるAに訳が分から無くなる。彼氏彼女になった訳でも無い、無理矢理されて居る筈なのに抵抗1つしてこないAにだんだん苛立ちすら覚える。自分の好意を押し付ける様に、空気を吸おうと薄ら口を開けたのを見逃さずに自分の舌を捩じ込んだ。
『 ふっ…んんっ！ふぁ……っ 』
「 ん…っふ… 」
ﾋﾞｸｯと肩を跳ねたのを感じ、薄らと目を開けAを見てると視線を感じたのかAも目を開ける。お互い見詰め合った儘濃厚に深く絡み合うとAの瞳に涙が溜まって居て其れにより一層胸の昂りを感じる。どれぐらい時間が経ったか分から無い。そろそろ苦しくなったのか俺の胸を小さく叩く。ゆっくり唇を離すと酸素を欲す様に肩で息をするAの身体を片手でで支えてやる。
『 はっ……はぁ…っ 』
蕩けた表情で俺を見詰めながら溜まっていた涙が少し零れ落ちたのを指で拭ってやり、もう一度引き寄せて次は自分の腕の中に包む様に抱き締める。
「 …っA、質問に答えてくれ…なんで抵抗しない？」
『 ぁ……っ…そ、れは… 』
俺の肩に顔を埋めた儘首を小さく横に振った。其の仕草の意図が分からずにもう一度問い掛けると一言だけ俺にだけ聞こえる声で呟いた。
『 嫌じゃ…無かったから、です…っ… 』
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作者名：omo | 作成日時：2024年3月25日 12時
