甘い甘い私を呼ぶ声 ページ8
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さっき迄相手校の主将に対して怒りが凄くて頭に血が上って居たのに、鉄兄に背中を押されて夜久さんの胸に飛び込んだ瞬間怒りじゃ無い熱が内側から溢れ出して来た。自分の感情の浮き沈みが激し過ぎて怖い。こんなに感情の波が激しいのは初めてで、でも何故か何て、そんなの夜久さんの所為としか考えられない。どういう気持ちなの。どういう理論なの。自分の事なのに何も分から無い。人に向けられる好意、先程みたいな物には鈍い訳じゃ無い。でも、自分が人に向ける好意となると話は別で、感じた事の無い感情に入学式のあの日から戸惑ってばかりだ。
『 な、なんか…怒ってますか…？』
黙った儘私の座って居る一段下に屈んで居る夜久さんを見詰めながら不安気に問い掛ける。此処に連れ出されてからずっと苦しそうに顔を歪ませた儘の夜久さんにどうしたら良いのか分から無かった。私の表情が気に食わなかったのか。でもどんな顔だ。顔が赤くなって居たのは自分でも理解して居た。だって凄く顔が熱く感じたから。分かるのは其れだけで、其れに対して怒って居るのかそうじゃ無いのか、夜久さんの感情が読めない。其れが凄く不安に感じた。
「 …怒ってねーよ、ただ… 」
『 ただ…？』
「 確認したいだけ 」
夜久さんの言葉に首を傾げる。確認って何を。そう言い掛けた瞬間、夜久さんの手が私の髪に触れ、少し身体を私に寄せたかと思えば少し肩を押される。身構えて居なかった私の身体は後ろに少し傾き、後ろの壁に後頭部が当たりそうになるのを夜久さんの掌で支えられて痛みは感じ無かった。髪に触れて居た手を離し、壁に腕を付く形になり、自然と私の目線が斜め上に行き、脚が曲がり包み込まれる様な形になる。私と夜久さんの視線が絡み合った瞬間どくんと心臓が鳴り、慌てて目線を下げ目をぎゅっと瞑る。
「 A、目逸らすな… 」
気配がもっと近付いたかと思えば耳元で囁かれて仕舞う。其の甘過ぎる声に目眩がした。誘導される様に顔を上げると夜久さんの熱い視線が刺さって鼓動が速くなる。
『 ( こんな…にドキドキしたら…死んじゃうってば……っ… ) 』
「 っだから…その顔やめろって…言ってんだろ…っ 」
分かんないよ。私今どんな顔してるの。心臓の音しか聞こえ無い。分からないです。夜久さん、教えてください。そう頭の中で思った時、手が勝手に動いて夜久さんのユニフォームの裾をきゅっと握った。夜久さんの目が見開かれ、また苦しそうに顔を歪ませた。
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作者名：omo | 作成日時：2024年3月25日 12時
