憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】② (ページ34)

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自己肯定感ページ34

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抓られた頬を優しく撫でながら、研磨くんの言葉に目を丸くして歩いて居た脚を止めた。

「 … 夜久くんどう見てもモテるじゃん」

其れは知ってる。音駒に来る前から知ってる。優しくて、話し易くて、面倒見も良い。プラスで運動も出来て、音駒の守護神と言われてるぐらいだ。鉄兄からバレンタインに何人かにチョコを貰って居たと聞いた事も有る。そりゃああんなに格好良いのだからモテない訳がない。

『そんなの…知ってるもん… 』

研磨くんの言いたい事は直ぐに理解した。私が夜久さんの隣に立てるぐらいになったら好きだと伝えるなんて、其れがいつになるかなんて誰にも分から無い。返事は直ぐじゃ無くて良いって言われててもそんな悠長な事を考えてたら何時まで待ってくれるかも分から無い夜久さんが他の女の子の事を好きになってそっちと付き合って仕舞うかもしれない。其れは薄々不安に思って居た事で、でもだからってこんな自分で良いなんてそんな軽い決断も出来ないで居た。

「 …なんでも良いけどさ、Aは考えすぎなとこあるから」

『うっ… 』

「クロにいつも言われてるでしょ、自分の気持ちに素直になれって」

『ちゃんと素直だもん… 』

「 ………頑固」

分かってる。自分が一番。

私の下がった眉に気付いたのか研磨くんが私の頭に触れた。鉄兄や夜久さんからは良く撫でられたりする私の頭は珍しく研磨くんに撫でられて居た。少し吃驚しながら撫でられた頭に手を添えると少し意地悪そうな笑みを浮かべて " そんなとこも好きになって貰えてたら良いね " と発せられた言葉に少し優しさなんかも感じて小さく頷いた。

「ほら、行くよ」

皆が自分の荷物を持って外に出ようとするのを遠目に確認して、先を歩く研磨くんの後ろを追う様に脚を動かして直ぐ隣を歩くと研磨くんの顔を覗き込む。

『研磨くんってやっぱり根は優しいよね？』

「うるさいな」

少し照れ臭そうな研磨くんの表情に小さく笑みを零しながら暖かい空気が心地良い。2人で歩いて居るとふと海先輩と鉄兄と話す夜久さんの姿が視界に入った。とくんと小さく鳴る心臓らへんを手で抑えながら先程の研磨くんの言葉をもう一度再生する。

" 誰かに取られても知らないよ____ "

其の言葉がずっと頭の中で再生されて苦しくなる。そんなの良く考え無くても分かる。嫌だ。誰かの隣で微笑む夜久さんなんて見たく無い。でも、自信が無い。ずっと愛される保証なんて何処にも無いでしょ？

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