憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】② (ページ28)

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試合後のルーティンページ28

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6セット目の終了の音が鳴り響く。スコアを記入し終えて顔を上げるともうバテバテとでもいった皆が寝転がったり膝に手をついたりして苦しそうな表情をしていた。

『あ～…もう無理そうですね』

「流石にね… 」

私と芝山くんが苦笑いしながら皆を見詰めて居ると、未だ動けるとでも言った翔陽がｶﾞﾊﾞｯと起き上がり " もう1回ｨｨｨ！！！ " と大声を上げる。其れを見て誰もが顔を引きつらせるが、私はまた込み上げて来そうな笑いを抑えるのに口元を両手で覆った。

「だぁめだ！新幹線の時間があるんだ！」

今にも走り出しそうな翔陽を烏野のコーチが首根っこを掴んで制す。終了すればお互いのベンチへ向かい、監督やコーチの助言や賞賛を受ける。戻って来たチームメイトにタオルとドリンクを配りながら一人一人に私も此処が良かったとかあそこはもう少しこうした方が良いとか伝えられる範囲で伝えていた。

『犬岡、ナイスゲーム！』

「お～さんきゅ～！」

『でもまだまだ翔陽の体力には及ばない、かな？』

「うっ…流石に6セットもあの速さについて行くのはきつかった… 」

『ふふだね。だからもう少し体力をつけよっか』

「うえ」

『体力作りのメニュー教えるから、それ家でやってね』

まだ1年生で此処迄の実力が有るのは素晴らしいし、此れからもっと強くなれると思う。私は其の実力をもっと伸ばして欲しい。ドリンクを手渡す時にそう告げると少し苦笑いを零しながらも元気良く返事をしてくれた。犬岡へ笑みを向けた後に研磨くんの元へ駆け寄る。

『研磨くん、はい！ドリンクとタオルね』

「んー… 」

座った儘の研磨くんは相当お疲れの様で、なかなか差し出す物を受け取らないので、目の前に屈んで流れる汗をタオルで拭ってあげた。少し眉間に皺を寄せて " 自分でやるって… " と言いながらも拒否する力はもう無い様だ。

『言いたい事は有るけど、今日の研磨くんは見てて凄く楽しかったからご褒美って事で』

「 …なにそれ」

研磨くんは相手をしっかり分析して、其れに合った戦い方を皆に伝えて戦って来た。確かに研磨くんは勝敗に拘りは無いし、其れ以上でも以下でも無い。でも、今日は少し、ほんの少しだけ私が見てる限りでは楽しそうだった。欲しかったゲームを買って来て、初めてプレイをする時の様な。不服そうな研磨くんに笑みが零れながらドリンクも飲む様に隣に置き、鉄兄と居る夜久さんの傍に駆け寄った。

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