兄から感じる安心感 ページ24
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「 ( くそ…っなんだよその目、そっちじゃなくて…こっちを、俺を見ろよっ…… ) 」
唇を噛み締めながら只管に此方を見る様に念を送る。余裕の無い気持ちがひょっこりと顔を出して心の中を支配する。声が出そうになるのを拳を握って必死に抑えて居ると背中を誰かに少し叩かれ、ﾊｯとして其の主へ視線を移すと黒尾が呆れ気味に笑っていた。
「 夜ー久、気にすんなよー？あれって別に惚れたとか目を奪われたとかそんなんじゃねーから 」
「 は……？ 」
黒尾の言葉に意味が分からず首を傾げると溜息を零した。
「 プロの試合見てもあんな顔すんぞあいつは 」
「 プロ…って… 」
「 なんつーかすげーもの見るとテンション上がるみたいなんですヨネー… 」
「 な、んだよ…そっ…かよ… 」
「 ぷはっ！安心したーって顔してんぞ 」
「 うっせーよ！」
兄である黒尾からの言葉だったからか酷く安心したのは事実で、動揺で煩かった心音も徐々に落ち着き出して来た。試合中にこんな動揺する事は基本的に無かった所為で変な汗をかいてしまった。服の裾で流れた汗を少し拭いながら横目でAの姿を盗み見る。座り直した彼女は恥ずかしいのか手元にあったバインダーで少し顔を隠して居た。其の隙間から少し瞳が覗き、其の瞳が俺を捕らえる。急に視線が合った事で落ち着いた筈の心臓が跳ねる。Aも目が合うと思って居なかったのか少し目を見開く。そんな彼女へ向かって口を開け閉めさせながら一言だけ伝える。
「 " ばーか " 」
口の動きで言ったことが伝わったのか羞恥心で赤らめた頬を少し膨らませながらむっとした表情を見せる。其の表情に愛しさが込み上げ、小さく吹き出して笑ってしまった。少し中断した試合がまた始まりを告げ、動揺から逃れた安心感のおかげで平常心を保つ事が出来た。然し向こうの10番の動きの所為で皆が翻弄され雰囲気が少し烏野ムードになりそうになっていた処でタイムの合図が鳴る。
「 リベロもスパイカーも良いのが居るな、中でも1番とんでもねーのはセッターだ…… 」
監督の話を聞き入れながらAから受け取ったドリンクで喉を潤す。
『 …スパイカーの最高打点への最速トス、針の穴を通すコントロール…、天才は仕方ないですね。
でも……天才が1人居たところで、それだけで勝てる程甘くないです 』
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作者名：omo | 作成日時：2024年3月25日 12時
