憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】② (ページ23)

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視線の先への動揺ページ23

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Aが烏野の誰かと知り合いなんてこれっぽっちも予想して居なかった。しかも名前で呼び合う仲とか聞いて無い。自分で思ってる寄りも拗ねて居たらしい俺に困った様な表情を見せるAを見て " 何やってんだ俺 " と心の中で思った。好きだと告げたからと言ってもAは俺の彼女になった訳では無いから嫉妬なんてものを当て付けて良い訳も無い。そろそろ機嫌戻さねーとと思いながら口を開こうとすると少し上目遣いになったAが先に口を開いた。

『 …じゃあ……

烏野との試合で夜久さんの事かっこいいなって思わせてくれたら呼んであげます』

まさかそんな考えが出て来ると思わ無くて、驚きの余り、目を丸くさせる。直ぐに顔を伏せて俺から顔を逸らしたAをじっと見詰めると少し耳が赤い気がした。其の言葉にどれだけの意味が混ざって居るのかは分からない。俺は黒尾みたいに勘が鋭い訳でも無いし、人の心何て読み取れない。唯今すぐに抱き締めたい気持ちを抑えながらAの頭に触れて笑顔と言葉に気合いを込めた。

「任せろ！」

得体の知れ無い烏野との試合でどうなるか何て分から無いけど、俺はいつも通りのレシーブをするだけ。招集が掛かりいつもの円陣を組めばコート内へ。初手の研磨のサーブから相手チームへ飛んで行くボールを目で追う。トスが上がる瞬間にどのスパイカーを使ってくるのか、其のスパイカーは何処へうってくるのか瞬時に見分け無ければならない。セッターの手に触れたかと思えば既に自分のコート内へボールが転がって居た。其れを見て俺だけじゃ無い、誰もが目を見開き、驚いた。

「はや！なにっ？！」

「あんなとっから速攻…？」

いきなり速攻を使って来る度胸も、今迄見て来た速攻と明らかに違い、驚きが隠せ無かった。ｶﾞﾀﾝｯとベンチの方から音がした気がして、ふとベンチへ目をやると立ち上がって相手コートを見るAが視界に入った。両隣に座って居る監督や、芝山も不思議そうな表情で彼女を見てる。

「ほんと素直すぎ… 」

俺の横を通る寸前に研磨が小さく呟いた声が耳に届いて、Aの表情を見ると、面白いおもちゃでも見付けた子供の様に瞳の中にきらきらとした光を纏わせながら丸い瞳をより一層丸くさせて何かへ視線を向けて居た。其の視線の先を目で追うと、先程のトスを上げたセッターへ辿り着く。

「 …は…… 」

どくんと心臓が跳ねた。拳をぎゅっと握りながら唯Aを見詰めてもなかなか目が合わ無い。

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