憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】② (ページ22)

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断じて気の迷いではありませんページ22

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いつもの様に皆で気合いを入れる姿をベンチから見詰める。研磨くんの嫌そうな顔に少し笑って仕舞うが、私も最初は恥ずかしかったけど今となっては好きだ。皆の空気も引き締まるし、音駒のバレーを表してる言葉の様でとても心地良い。スコアシートをバインダーに挟み、スコアをつける準備をする。プラスで烏野の情報や皆の状態を残すべく自分のノートも開いた。

「相変わらず熱心だなぁ」

『私の取り柄みたいな物なので』

びっしり敷き詰められたノートを横目に猫又監督が笑った。ペンの頭を押し込み先を出せば、顔を上げて夜久さんを視界に入れた。いつも通りの真剣な、何処かこれから始まる戦いへのわくわくなのか少し口角が上がってる気がして、其の表情にどきんと心臓が鳴って仕舞い、ﾋﾟ---ｯと試合の始まる合図に少し肩を震わせる。

研磨くんが打ったサーブの後、烏野のレシーブが上がり誰へトスが上がるのか皆目で追う____

ﾊﾞｼﾝｯ

『っ……！！！？』

ボールが弧を描き、黒髪のセッターの子がボールに触れたかと思った瞬間ボールが此方側のコートに落ちていた。

「なんっだあれ、ボール見てねぇじゃねーか

ん？A、どうした？」

名前を呼ばれた気がした。けど其の声は私の耳に届かずに唯セッターの男の子から目が離せなかった。凄い。針の穴に糸を通す様なコントロール、天才って本当に居るんだと思った。服の裾をぐいぐいと引っ張られる感覚がしてﾊｯとする。じっと見詰めてしまって居た男の子も此方を見ていてﾊﾞﾁｯと視線が交わった。

「 Aさん！ちょ！皆見てるよ！」

『 …へあ！す、すみません！』

横に座って居た芝山くんが必死に私を座らそうと声を掛けてくれて居た事に今気付き辺りを見渡すと研磨くんや鉄兄、夜久さんも此方を見て居て慌ててベンチに座り直した。恥ずかしさで顔に熱が溜まる。またやってしまった。決して此れは浮気等では無い。今迄にだってプロの試合とか全国の試合とか沢山見て来たけど凄いプレーにはいつだって目を奪われ、身体が勝手に動いて仕舞う事は何度かあったから。

でも、心を動かすのも、見惚れて仕舞うのも、其のプレーをずっと見て居たいと思うのも、たった1人だけだ。

「ったく、お前さんは素直だねぇー」

『うう…すみません… 』

私のこういう素直過ぎる処を猫又監督には知られて居るから勘違いはされない。鉄兄や研磨くんも慣れてるから気にして無いという呆れ顔。

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