憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】② (ページ21)

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狡い思考と貪欲ページ21

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私の言う事に全部反論して来る夜久さん。未だに拗ねた様な表情に愛しさが勝って仕舞いそうだった。好きな人が嫉妬してくれる何て嬉しいに決まってるし拗ね方が可愛い。そんなに私に名前で呼んで欲しいのか。ずっと呼ぶ訳じゃ無い、1回だけと言って居るし良いかなと甘い答えになってしまう。此の儘機嫌が戻らずに試合になってしまうと私の所為でいつもの夜久さんのプレーが出来ないのは困る。夜久さんも必要不可欠なのだ。どうしたものかと頭を捻って考えるとある1つの考えが浮かんだ。

『 …じゃあ……

烏野との試合で夜久さんの事かっこいいなって思わせてくれたら呼んであげます』

「っ…！」

我ながら馬鹿みたいな考えだ。夜久さんを格好良いと思わなかった事なんて有る訳無い。今回の試合でも絶対目が離せ無いぐらい格好良いに決まってる。けど、選手一人一人のやる気を引き出すのもマネージャーの仕事。決して私の為に本気になって欲しい訳じゃ無い。其の気持ちが0じゃ無いとも言い切れ無い。

告白の返事もせずに夜久さんの気持ちを利用するみたいなやり方は絶対やりたく無いし、私が夜久さんの隣に立てる様になるまで自分の気持ちを知られるつもりも無いけど、やっぱり好意というものはいつでもどんな時でも聞きたくなるし感じたくなる。

『 ( 狡い女だなぁ…我ながら…… ) 』

少し俯き気味になり夜久さんが見え無いぐらいの角度で呆れた笑みを浮かべた。私の考えに目を丸くする夜久さんの表情が頭に残ってる。そんな私の頭の上にふわっと優しい手が乗せられた。顔を上げて其の手の主を見る。

「任せろ！」

いつもの眩しい笑顔。他の人とは違い、眩しいけどずっと見て居たい様な甘さもあって、此の笑顔は独り占めしたいなって心の何処かで思ってしまった。そう一言だけ私に向かって言い残すと招集の掛かった場所へ走って行った。私も整列しなくちゃ行けないのに少し脚が動かなかった。

『もうかっこいいの何…… 』

私の呟きは誰にも届かずに空気になって消える。少し熱くなった頬を冷やす様に両手で頬を覆いながらこれから始まる試合の為にも気を引き締めた。

俺たちは血液だ

滞りなく流れろ酸素を回せ

脳が

正常に働くために____

「いくぞｫ！！」

「「「「オォッス！」」」」

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