憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】② (ページ20)

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心地の良い嫉妬ページ20

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中へ入り、音駒が集まる方へ一緒に荷物を置いてくれて、翔陽は烏野の皆が居る方へ戻ろうと脚を進めた。

『翔陽ー！ありがとう！』

後ろ姿に向かってお礼を伝えると少し振り返りぴょんぴょんと飛びながら手を振る翔陽にやっぱり頬が緩んでしまう。小さく笑いながらタオルやドリンクの準備をしようと振り返るとストレッチをしながらじっと此方を見ている夜久さんと目が合った。

「知り合いだったのか？」

『え』

見詰めた儘何も言って来ない夜久さんを私も不思議そうに首を傾げながら見詰め返すと予想とは違った問い掛けに目を丸くする。夜久さんの横に居る鉄兄が " 前に研磨と迷子になった時に知り合ったんだと " と私の代わりに答えてくれたので其れに付け加えて説明すると、目を細めながら少し唇を尖らした。

『会ったのは2度目ですよ』

「 ……のわりに仲良さそうなのな」

『え、ええ？そうですかね？まぁ…人見知りとは無縁そうですもんね、翔陽』

鉄兄が監督に呼ばれて離れるのを見送りながら口を動かす。言い切ってから夜久さんを見るが其の表情に吃驚した。少しむすっとした拗ねた様な表情。何故拗ねる。今の会話に拗ねる要素があったかと疑問に思いながら夜久さんの目の前で屈んで顔を覗き込むと丸い瞳を一層丸くさせながら薄らと口を開いた。

『夜久さん？』

「 ……俺の名前知ってる？」

『え？もちろん知ってますけど… 』

「言って」

『夜久衛輔さん？』

「名字もさんもいらねー… 」

『ええ…？其れじゃ呼び捨てになっちゃいますよ駄目です』

「いいから、1回だけ」

『駄目ですよ… 』

何の意図が有るやり取りなのか頭の中でぐるぐると其の意図を読み取る。名前を呼んで欲しいらしい。然し夜久さんは先輩なので流石に呼べずに首を横に振るとまたむっとした表情の儘 " 知り合ったばっかの奴は名前で呼ぶのに？ " と私にだけ聞こえる声で呟いた。

『ぇ… 』

もしや、もしかしなくても、私が翔陽の事を名前で呼んで居たのに嫉妬したのか。否、でも研磨くんとかリエーフとか他に名前で呼ぶ人は居るし今更嫉妬する何て、と少し笑いそうになってしまう。

『研磨くんとリエーフも名前で呼んでますよ…？』

「研磨は幼馴染みだし…リエーフは同級生だろ？しかも灰羽って呼ぶ奴いねーし… 」

『 …翔陽も同い年ですけど』

「学校ちげーじゃん… 」

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