泣き顔すらも愛おしくて ページ15
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部屋迄戻ると皆布団に潜り込んで眠りについていた。起こさ無い様に敷かれた自分の布団へ入り込む。仰向けになり瞼を閉じるとその裏に浮かぶのは先程のAの顔だった。急に涙を流し出したAは目にゴミが入っただけだと言ったが、多分嘘だ。此れは直感。俺が振り返るよりも前に、握って居た手がぎゅっと強く握り返された事には気付いて居たし、何より涙を流したAの表情は苦しそうに、でも何処か愛らしい笑みを浮かべて居た。其の表情に少しどきりと心臓が跳ねたのは一瞬。其の涙の理由は分からないし、誤魔化されたので真相は闇の中とでも言える。問い詰め様とも思ったけど、多分俺の所為で色々考え込んでしまって居るんだと思うと申し訳無くて其れは出来なかった。
好きな子の事は勿論笑わせたい。そりゃあ泣いた顔も可愛いし愛おしいなって思うけど、悲しいとか辛いとかそんな気持ちがこもった涙は流させたく無い。
「 ……泣く理由って、なんだ… 」
頭で考えていた言葉が自分の口と直結してしまい、ぽろっと出てしまう。声を出した事で誰かが起きないか焦って手の甲で口元を隠した。俺の事を考えて欲しいとお願いしたのは自分自身で、でもその所為で泣かせてしまったのかと思うと胸が痛かった。
笑っていて欲しい。Aに涙は似合わ無い。否、泣いていても可愛いのには変わら無いし、泣いてしまったとしても、1人でなんて泣かせ無い。泣くなら俺の前だけにして欲しい。ふつふつと湧き上がるこの気持ちは独占欲。こんなに直ぐいろんな気持ちや欲が自分の中で芽生えるなんて思ってなかったから少し笑ってしまう。目を閉じて少し口角を上げながら其の儘深い夢の中へと入り込んでいくのを感じた。
「 夜久さーん！！もう朝っすよー！！」
「 ん〜……… 」
瞼の裏から少し差し込む光が眩しく感じて其れから逃れる様に被って居た布団を引っ張り頭のてっぺんまで覆い隠した。
「 夜久さーん！」
「 夜久が朝起き無いの珍しいな 」
直ぐ近くで山本の大きい声が俺を呼び起こす。眠りから這い上がれ無い俺にとっては煩いと感じてしまう程の声で少し眉間に皺が寄ってしまう。
「 夜にAちゃんと外に涼みに行って、わりと遅くまで話してたみたいだからね 」
「 へぇ〜〜……夜まで〜？夜っ久んヤルゥ〜〜 」
目を閉じて居ても分かるぐらいの黒尾のにやけた顔と声が布団越しに耳に届き唸りながら布団から顔を出した。
「 朝からそのニヤけ面やめろ… 」
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作者名：omo | 作成日時：2024年3月25日 12時
