憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】② (ページ14)

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努力を怠ってはいけないページ14

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" こんな優しくて暖かい、眩しい人の隣に立って良いの？ "

急に頭に浮かんだ疑問。憧れの夜久さんの近くに行きたくて頑張って来たけど、其れは仲間の中に入りたかっただけで、彼女になりたいとか横に立ちたいとかそんな大それた事では無い。其れに、その為への努力は1ミリも行って居ないし、覚悟も無い。此の人はこれからももっと上へ行く人だ。其れは夜久さんを初めて目にした時から確信して居た。そんな人の大切な隣が私なんて夜久さんが良いと言っても私は嫌だし、周りも " なんで此奴？ " と思うに違い無い。

『ご…めんなさい、目にゴミ入っちゃったみたいで… 』

「え……大丈夫かよ」

『はい！もう涙で流れました…！』

ポケットに入れて居たハンカチで涙を拭い、違和感の無い様に笑顔を見せた。夜久さんの眉が小さく動いた気がしたけど " ったく、後で目洗えよ？ " ともう一度私の頭を優しく撫でた。其の後、明日の烏野との試合が楽しみだとか、私の作った晩ご飯が美味しかったとか、そんな他愛も無い話をしてから私の部屋迄夜久さんが送ってくれた。

『わざわざすみません…ありがとうございました』

「ん、早く寝ろよ」

『 …おやすみなさい！』

「おやすみ」

扉の隙間から夜久さんが自分の部屋へ戻って行くのを見送りながら小さく鳴る心臓の辺りを掌で抑える。気持ちに気付いてから馬鹿みたいに心臓が煩いだけじゃ無くて、他にも感じる幸せな暖かい感覚。扉を閉め、其の儘床に座り込んだ。

『 …夜久さん…好きです…ずっと前から…大好きです…… 』

私の独り言は薄暗い部屋の中で響く事無く消えていく。両想いなんてこんな幸せな気持ちは早く伝えたいし、早くあの胸に飛び込みたい。でも、未だ駄目だ。こんな弱虫で何も出来て無い私なんて相応しく無い。これから夜久さんを見て気持ちが溢れて仕舞わないか心配だが隠さ無きゃいけない。

『強く…なる…、もっと、頑張らなきゃ…！』

気合いを入れる様に両頬を両手で覆いぐっと力を込める。夜久さんに相応しい女になる為に。こんな事を言ったら研磨くん辺りに馬鹿にされそうだけど、自分で気付いただけ進歩だと思う。

『ふ…ふわぁ…もう寝なきゃ』

夜風に当たり、少し泣いてしまった所為で眠気が急に襲って来た。欠伸を掌で隠しながら肩に掛けて居たジャージを畳んで鞄の近くに置き、敷かれた布団へ入り込む。ゆっくりと瞼が閉じられ、此の後にみる夢を楽しみに思いながら眠りに付いた。

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