涙の理由 ページ13
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『 ぇ、いや…夜久さんっ大丈夫なんで部屋戻ってください！』
其れを阻止する様に動き出しそうな自分の脚を止めて否定すると、前を向いて居た夜久さんが顔だけ振り返り少し唇を尖らせながら " 俺が嫌なんだよ…んな格好で1人で行かすかよ " と呟いた。其の言葉に何か変かなと自分の今の格好を確認するも、唯のショートパンツにTシャツ、その上にはジャージを羽織ってるしなんの問題も無いと思うが。不思議そうな顔をする私に少し溜息を吐いて呆れた顔をする夜久さんに、急に引き寄せられたかと思えば今にも触れて仕舞いそうな程近い顔に目を見開く。
「 んな脚出して1人で居たら襲われんぞ 」
其れだけ言えばまた前を向いて歩き始める。其れにつられて私も歩き出す。顔に熱が溜まったのを冷やす様に空いてるもう片方の手で頬に触れた。
『 …夜久さんの…へんたい…… 』
「 …うるせ 」
私の呟きに小さく返す夜久さんに少し笑みが零れた。夜久さんの後ろ姿を見詰めながら小さく鳴る心音が心地良く感じる。髪がふわふわそうだなとか、小さいと言っても私より背は高いし、背中も大きいなとか、此の腕でいつもあの綺麗なレシーブをしてるんだなとか、考える事は夜久さんの事ばかりでどうしようも無く胸が締め付けられて目に涙が溜まる。どうしよう泣きそう。
「 少し涼んだら直ぐ戻るから…っな…んで泣いてんだよ… 」
『 へ……っ… 』
外に出て夜久さんが振り返り私の顔を見ると目を見開いた。夜久さんの言葉に驚いて、自分の目に触れ様とすると小さい涙の粒が頬を伝って流れた。
「 え、いや、まじでどうした…？何かあったか？」
流れる涙が止まら無い私に慌てて優しい頭を撫でながら宥め様としてくれる夜久さんに余計ぼろぼろと零れて仕舞う。涙が出る理由なんて分かってる。苦しいんだ。こんなにも頭の中は夜久さんだらけだから。其れは何年も前からずっとそうで、憧れだとずっと思って居た気持ちの真意が心のずっと端っこに居た事に気付いてしまった。心配そうに私を見詰める夜久さんを見てぎゅっと唇を噛み締める。夜久さんの指が私の頬に触れて、流れる涙を拭ってくれ、其の優しい手に心臓が鳴る。
『 夜…久さん…っ… 』
「 …ん？」
名前を呼ぶと小さく微笑み優しい笑顔を向けてくれる夜久さんが目に焼き付いて、口にしようとした言葉を飲み込んでしまった。
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作者名：omo | 作成日時：2024年3月25日 12時
