心臓の痛みを治す方法 ページ12
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あれ以降夜久さんも私もいつも通りで誰かに何か有った事を勘づかれる事は無かった。唯鉄兄はにやにやと変な顔してたけどそんな鉄兄に話し掛けると良い事等無いので無視した。偶に夜久さんと目が合うと心臓が吃驚する所為でいつもより今日は疲れてしまった。皆とは別の部屋で寝支度を整え布団に入り目を閉じて明日に備えて眠る。予定だった。
『 ね…眠れ無い… 』
そりゃあ昼間あんな事が有った夜何て眠れる訳が無い。目を閉じれば夜久さんの姿が浮かんで、耳には夜久さんの声が残って、身体の隅々には夜久さんに抱き締められた温もりが残ってる気がする。
『 考えようとする前からずっと頭に居るんだもん……考えようが無いよ…… 』
少し夜風に当たろうと部屋から出て外へ向かった。其の途中、自販機の近くで夜久さんと海先輩が話してるのが視界に入ってぴたりと脚が止まる。夜久さんが笑ってる声が聞こえてどきんとまた心臓が鳴る。私は今日どれだけ心臓を苦しめれば済むのだろうか、胸に手を当てて深呼吸をし、気付かれ無い様に歩き出そうとすれば何故かつるっと滑り " ひゃっ " と声を漏らしながらバタンと後ろに転けて仕舞った。其の音と声に気付いたのか夜久さんと海先輩が此方を向いた。床に叩き付けられたお尻が痛いけど其れ以前に羞恥心が凄くて2人の顔が見れ無かった。
「 A？大丈夫か？」
「 そこ滑りやすいよね、気を付けて 」
2人が私の目の前迄来て居て顔を上げると心配そうに手を差し出す夜久さんと微笑みながら床に落ちた私の肩に掛かっていた筈のジャージを拾い上げてくれる海先輩。夜久さんの手を取るとぐっと引っ張られて其の勢いで立ち上がる。其の手は私の手とは違って大きくて柔らかく無くて男の人の手で、心臓が煩い。
「 どこか行こうとしてたの？」
海先輩からジャージを受け取りもう一度肩に掛ける。海先輩の言葉に小さく頷き " ちょっと眠れないんで…夜風にでも当たって来ようかと " そう告げると夜久さんが眉間に皺を寄せて " こんな時間にかよ、危ねーだろ " と握って居た手に力を込めた。
「 確かに1人じゃ危ないね、夜久着いてってあげなよ 」
『 えっ？！』
「 じゃ、先に部屋に戻ってるから 」
海先輩の提案に驚いて居ると私の驚き等無視して颯爽と部屋迄の廊下を歩いて行った。少しの間沈黙が続くが其の沈黙を破る様に夜久さんが握った儘の私の手を引いて歩き出した。
「 …行くぞ 」
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作者名：omo | 作成日時：2024年3月25日 12時
