貴方ならまるごと(js) ページ4
JS
「浴衣姿、とっても可愛いよ」
恋人と花火大会に来た今年の夏。
どろどろに甘い笑顔でしきりに褒めてくれるジスは、本当に優しい。彼の性格と、母国のお国柄もあるのか、愛情表現はとにかく豊かで素直。付き合って1年は経つが、未だに愛情攻撃に慣れないのだ。
いつでも優しいので、怒っているところを見たことがない私は気になって聞いてみたことがある。
ジスは怒ったりむかついたりしないの？と
「Aに対してムカついたりしたことはないよ、本当にいい子なんだもん。でももちろん、僕だって怒ることはあるよ〜」
そう言われても、全く想像がつかない。
ジスが飲み物を買ってきてくれるというので、空いているベンチに腰掛けた。
待っていると、ナンパ目的の3人の男性に囲まれてしまった。慣れていない私はどう追い払えばよいのかわからず。
立ち上がりひたすら、すみません、と握ってこようとする手を交わすことしかできなくて。
後ろから強く腕を引かれ、見上げるとジスが。安心と同時に、まっすぐ声を掛けてきた人たちを見据える冷たい目に驚いた。
「彼女は嫌がってるのに、そんなことも分からない？」
ジス、と声を掛けるも、黙っていてと言うように手を強く握られる。
いつもより低い声に、聞いたことない強めの口調。
もしかして、怒ってる…？
「この子僕のだから、ナンパするなら他を当たってくれる？」
気まずそうに男たちがそそくさと去っていく。
お礼を言おうとするとぎゅう、と後ろから抱きしめられた。
「…ごめんね、みっともないこと言っちゃった」
手も強く握ってごめんね、痛くなかった？と聞く彼はいつも通り優しい。
「謝る必要なんてないよ、守ってくれてありがとう」
〜
あれから私たちは何事もなく花火を楽しんだ。
寝る直前、ベッドの中2人で今日の出来事を振り返る。
ジスが怒ったの初めて見た、と呟くと布団の中に隠れてしまった。名前を呼ぶと、目だけ見えるようにして出てくる。
「余裕ないところ見せたくなかったのに…もう、なんで僕こんな可愛い子をひとりにしたんだろ…」
不貞腐れているのがなんだか可愛くて、布団ごと抱きしめた。あぁ、どんな彼もすきだなぁ。
「かわいすぎる、ジスが好きすぎてどうしよう…」
「A…それはこっちの台詞なんだけど？」
fin.
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作者名：みな | 作成日時：2023年8月2日 6時
