見合う女性になりたくて(sc) ページ1
花火大会なんて何年振りだろう。
学生の頃はよく友達や当時付き合っていた人と浴衣を着てそれなりに楽しんでいた。大人になった今はというと…友達も結婚や出産をする年になり、呑気に学生の頃のような恋愛をするわけにもいかず。
学生に戻りたいなぁなんて浸っていた私が、今こうして浮かれている理由は。
「A〜準備できた？」
「スンチョラ、髪飾りどっちがいいと思う？」
浴衣姿で、いつもより一際かっこいいスンチョルは半年前にできた恋人。今まで付き合ってきた方達と比べるのはいかがなものかと思うが、贔屓目なしで本当に一番素敵な人だ。
時折、彼の隣にいてもいいのか不安になるくらいに。
「ん〜どっちも似合うけど、この歩いた時に揺れる飾り好きだな」
彼の好みになりたくて、リップ、アイシャドウ、ネイル諸々、好きな色を聞いては彼の意見を採用している。
「…どうかな？」
髪飾りをつけて反応を伺う。
そうしたら、世界でいちばん愛おしいです、みたいな目をして「とっても可愛い」と言ってくれるから、ちょっとだけ自信がつくの。
ほんのたまに、こっちの方が好きだったなって時もあるけれど。
「そういえば、なんで俺に聞いてくれるの？Aがすきなやつなら俺もすきだよ」
「ん〜…スンチョルの好みになりたいの」
彼は一瞬目を丸くし、きゅ、と表情を引き締めたかと思えば手を握られた。
「A、俺の好みは好きになった瞬間から全部お前だよ。どの色にしても、どの服にしても、Aが着てるから好みなの」
「でも私、自信なくて…スンチョルはすごくかっこいいから、時々不安になる」
少し泣きそうになった。
スンチョルはなにも悪くないのに、俺がちゃんともっとたくさん言葉にしてたら良かったな、とひたすら謝る。
空いている手で優しく頬に触れて、
「Aよく聞いて。今度からは自分が好きな色を選んで、俺は好きな色を身につけてるAのことを愛してるから」
それでも本当に迷った時はいつでも聞いてね、と笑顔で。
〜
花火が上がるまで座りながら、嬉しそうにかき氷の写真を撮る彼を見つめてふと思ったこと。
「スンチョラ、愛してるよ」
「なに急に〜〜そういうのは家で言ってくれない？
…ちゅーしたくなっちゃうじゃん」
拗ねたような表情に赤くなっている耳を見て、この先どうか彼とずっと一緒にいられますように、と願った。
fin.
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作者名：みな | 作成日時：2023年8月2日 6時
