59 ページ10
shizu
「おい、ちょっと…」
松倉の部屋の扉がガチャンと音を立てて開いて
見向きもせずに勢いで開かれたその隙間を
縫うように入って行った。
咄嗟に閉じかけたギリギリのところでドアノブを掴む。
「入っていいー?」
まあ返事はない、よな。
返事がないってことは
どっちでもいいって事であってる?
かなり強引だけど…(苦笑)
掴んだドアノブを離して閉まっていくのをただ見るなんて
俺には出来ないから、とりあえず部屋に入った。
なんか言われたら出ればいい。
ベッドにドサッと横向きに寝転んでる松倉がいて、
腕で顔を覆っているから表情はよく見えない。
行き場をなくした俺は、その端に座ってみる。
ベッドがしなって、松倉がモゾモゾと動いた。
「…あんなキレてるところ初めて見たわ、
マネージャーすげえ苦い顔してたけど……」
「…うん」
「ごめん」
鼻にかかった声で表情が見えなくても
何となくわかる。
「…しず、が、入ってこなかったら、俺…、」
グッと力を込めて肩が揺れてるのが気になる…
「なあ、今もまだちょっと気持ち昂ってるだろ、
とりあえず深呼吸しな…?」
慣れない感情の出し方をしたことで
若干パニクってる松倉の背中を撫でる。
嫌がられるかと思ったけど、
案外受け入れてくれた事にホッとして
背中を見つめながらどうしてやったらいいか考えていた。
「しず、…」
「何?」
「……ね、元太と、連絡とってる、?」
「んー、そんな頻繁じゃないけど」
「…あれ以降、全然返ってこねぇんだよ、」
既読もつかない、って嘆いてはあっとでかいため息をついた。
「それって会う、会わないの話以外でも?」
「うん、もう何も…来ねえ、」
「で、マネージャーに聞いたの?」
「……ん、」
あの様子からすると、聞きたいことは聞けず、
あーなったって事か。
「もう一回、少し置いてからでもいいから聞きに行こうか?
一緒に行くんでもいいし、俺だけでも」
「、いや…」
体を起こして俯いた。
「いや、いい…」
「なんで?」
「…いい、」
「気まずいんだったら俺行くよ?」
「いや、…しずと話したら何となくすっきりしたから」
全然そんな顔してねぇけど、
松倉は…変なとこ見せてごめん、だとか
ありがと、ごめん、とか言って肩をすぼめた。
236人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おもち | 作成日時:2021年10月1日 10時