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matsuku
俺らは子供みたいに中腰で暗くなった廊下を進んだ。
「本当に大丈夫かな…」
「こっちはもう、電気消えてるから、たぶん平気…」
元太に腕を引かれて
コソコソと病室に向かった。
誰にもバレずにどうにかたどり着いて
安堵の息を漏らしベッドに手を着いた。
元太がはっとして、
部屋の電気を消してベッド周りのカーテンを閉めて
シーって口元に人差し指を当てた。
俺はベッドの上で息を潜めた。
扉が開いた音がして、微かに光を感じる。
それから、扉が閉まる音……
「なんか、修学旅行の夜みたいだね」
「相変わらず例え上手だな(笑)」
「ワクワクするもんじゃないけどさ」
元太はベッドの備え付けのライトをパチンとつけた。
やっと顔がよく見える…
少し頬っぺに笑みを残したまま下を向いた。
「元太、顔見せて」
「なんで…」
「いいじゃん、顔みたい」
言いたいことがいっぱいあるんだよ。
なんで会ってくれないのか、
なんで返信を返さないのか
なんでずっと病院なんかにいんの。
でも……
久しぶりに…
やっと見れた元太は
やつれた顔をしていた。
それを見た瞬間…
もうそんな質問攻めた感情はなくなった…
もっと、もっとはやく…
会いたかった…
もっとはやく…会いに行くべきだった。
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作者名:おもち | 作成日時:2021年10月1日 10時