お笑い芸人さん。 (ページ3)

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｢ごめんな、俺がこんな仕事してるから。｣

するとAはふっと笑った。

｢私は全力で仕事をしてるパパが一番カッコイイと思うよ。大丈夫、今日はずっと家にいるから。｣

｢ありがとう。今日は出来れば窓とかカーテンとかも閉めといて、ピンポン鳴っても出なくてええから。暗くて嫌かもしれへんけど頼むわ。｣

2人の会話の間で何も分かっていないゆずは首を傾げている。

｢ゆず、今日は一日ママの言うことちゃんと聞いてお家で過ごしてな。｣

にこにこしながらゆずは頷いた。

小さな体を抱きしめると小さな腕が首の周りに回ってくる。

それともうひとり、華奢な肩を抱き寄せると背中に腕が回り込んでくる。ぎゅううううっという強い力で。
痛いて、と言いながらも暫くそのままでいてから離れると、Aは目に涙を浮かべていた。

俺はその涙を拭う。

｢泣かんでや。大丈夫やから。絶対帰ってくるから。絶対に。｣

ゆずをAに渡しながらそう言うと、うん、うんと頷いた。

しばらく足元に置いていたカバンを手に取り玄関に向かう。

｢行ってきます。｣

｢行ってらっしゃい。｣

｢行ってらっしゃ～い！｣

ドアが完全に閉まるまで、2人は笑顔で手を振ってくれた。

｢よし。｣

ふう、と息をはいて俺は歩き出した。