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「先輩後輩沢山いるから、歌ったら迷惑かなって思って。ていうかいつから見てたの?」
「割と最初から。」
「言えよ!恥ずかしいわ。」
そう言って俺の肩を軽く叩く。
「ごめんって。まっすーの声っていいよね、優しくて。」
「そう?改まって言われると照れるわ。」
2人で笑っていたら、俺の携帯が鳴った。
「あ、慶ちゃん。」
「もしもし手越?どこにいるの?そろそろだから戻ってきて。」
「はーい。」
「あとまっすーが携帯置きっぱなしでどこか行っちゃって。」
「まっすーも一緒にいるよ。楽屋戻るね。」
楽屋に戻ると、まっすーが慶ちゃんに「どこか行くなら携帯持って行ってね。焦るじゃん。」と言われていた。
そのあと少ししてから移動してスタンバイして、歌った。チェックするため映像を見ると、まっすーはやっぱり今にも泣きそうな声と表情で歌っていた。
その帰りに事故に遭って声が出なくなるなんて、誰も想像していなかったよ。
とんとん、と肩を叩かれる。まっすーは不思議そうな表情をしていた。そうだ、今はまっすーといるんだった。
「ねぇ、まっすー。」
俺の名前を呼んで欲しい。
「手越って呼んでよ。」
んふふって笑ってよ。
「あの時みたいに、歌ってよ。優しい声で、歌って。」
何を言っているんだ俺は。まっすーは何も言わずに、いや、何も言えずに俯いている。
「ハモろうよ。まっすーの下ハモ、聞かせてよ。」
こんなことを言っても困らせるだけなのはわかっている。けれど一度外に出ていった言葉はもう止まらない。
徐々に視界が潤んでいく。
「また歌ってさ、テゴマスで曲出そうよ。ツアーもやろうよ。」
まっすーはぎゅっと拳を握りしめている。そこに自分の手を乗せる。
まっすーと目が合う。
「手越、って俺の名前…呼んでよ。」
まっすーは口を開いたが、その口から何かが出てくることもなく、ぎゅっと口を閉じて涙を流した。
あぁ、まっすーの声が聞こえない。
END
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作者名:おもち | 作成日時:2020年3月7日 16時