【魔法使いの嫁】はじめての恋は魔法使いと…【４】

こんな幸せがあるんだ ページ7

*



彼は私の顔を見つめ

いたずらそうに微笑み



真っ赤じゃな…、そう言って面白そうに目を細めた



「う…、その、これ、は…」



言い訳しようとしたが

言葉は遮られ



そのまま腕を引かれ



体が密着するかしないかの距離まで引き寄せられ


見上げればリンデルさんの顔がすぐそこにあった



いたずらな笑みはもう消えていて


その瞳はいつもの穏やかな瞳で


嬉しそうに私を見つめていた




「やっと…届いたようじゃな」




優しいその掠れた低い声から


ただ想いを伝えられたことが嬉しいという感情が伝わってくる


まるで私にそれを伝えるまでに




【この先…おぬしが、心から愛する者と出会えたのなら…】



たくさん悩んで、もがいて




【子を連れて、またここへ遊びにきてくれ…】




でも諦めきれずに手を伸ばして苦しんだ


そんな想いが伝わってくる




この人は


私が同じ気持ちかどうかなんてわからなくても



ただ


誰かに愛されることが私の力になればいいと



私の為に


自分の気持ちを伝えてくれた




「…」




体が密着するかしないかの至近距離で私の両手を掴み


優しい水色の瞳に見つめられ


目を合わせるのが恥ずかしくて逃げるように下を向けば


彼は私の耳元に顔を寄せ、嫌だったら突き飛ばせ…、そう優しく囁くと


掴んでいた私の両手を引き寄せ


自分の胸の中へと閉じ込める


腰や背中に回った彼の腕は熱くて


私を包み込むお日様の香りに


また体中の熱が一気に上がる




「ッ…」




熱くて


落ち着かなくて


今すぐにでも逃げ出したいくらい恥ずかしいのに



このぬくもりに

なぜか目の奥が熱くなり


涙が滲む



自分の好きな人が


自分を好きでいてくれる



こんな幸せがあるんだってこと…



嬉しくて


嬉しくて



心が満たされていくような


そんな気持ちに体の力が抜けていく




「…」




魔力を奪う

全ての者から疎まれるそんな力を持っている私を


唯一愛してくれた家族はもういない




【アタシみたいにあんたと一緒にいてもいいって思う妖精や精霊はこの先きっと居るから】



初めてそう言ってくれた

あの妖精さんも


みんな私を庇って消えてしまった




「リンデルさん…、私」



やっと…

やっと私は


出会えたんだ


こんな私を


受け止めてくれる人に



「ッ…わ、私も…」



ああ……

この気持ちを



なんていうのだろう


うまく言葉にはできないけど



ある一つの言葉が


強く頭に浮かぶ




"生きていて良かった"





「私も…」



伝えたい…


あなたにこの気持ちを……


*

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