52 ジョングク ページ26
練習室を出てスマホを開く。
Aさんはもうついたのかな。
フロントの社員に挨拶をして出入り口に近付くと、ソファにAさんが座っているのが見えた。
「Aさん」
思わず笑みが浮かぶ。
迎えにきたいと言われた時は心配でたまらなくて、だめだと強く言いたくなる気持ちをすんでのところで抑えた。
でもいざ練習が終わってすぐにAさんの姿を見つけたら、嬉しさで全部どうでもよくなる。
近づいて肩に触れると、ハッとしたように彼女が顔を上げる。
「迷わなかった？」
「は、はい、完璧です！」
？
大きな声をあげるAさんにちょっと笑って、手を繋いで出口に促す。
「事務所ってすごい大きいんですね！ スポーツジムも初めて見たとき大きくてびっくりしたんですけど、事務所はそれ以上だなって思いました！」
あはは、と笑うAさんに首を傾げる。
なんだか、から元気みたいだ。
少し心配になって、手を引いて足を止める。
「来る時何かありました？」
「いえ、何もないです」
Aさんが真っ直ぐ俺を見る。
どこかで見た、女の人は嘘をつく時相手から目を逸らさないって。
「嘘つかないで」
「嘘じゃないですよ、ほんとです」
「誓う？」
「はい」
「絶対？」
「絶対です」
ふうん。
手を引いて夜道を二人で歩く。
まあ、Aさんが何もなかったというなら、信じよう。
でも、それから数日、Aさんが上の空で過ごすことが続いた。
さすがに心配になって、シャワーから戻ってきたAさんを捕まえてソファに座らせる。
「Aさん」
「はい」
「俺を迎えにきてくれた日、何があったんですか」
Aさんの目が揺れる。
キョロキョロと泳いで、膝の上で止まった。
「別に、これといったことはなにも……」
「じゃあどうして最近浮かない顔をしてるんですか」
「え、」
「悩んでることがあるなら俺に教えて」
じっとAさんを見つめる。
Aさんはちらりと俺を見て、眉尻を下げて泣きそうなのを堪えるように唇を引き結んで、静かに口を開いた。
「何もないです」
……ため息を吐く。
「そう」
ソファから立ち上がって寝室に向かう。
彼女を悩ませる原因が知りたかった。
なにか困っているなら頼ってほしかった。
言ってくれれば、助けてあげるのに。
もう、いい。
頑なに嘘をつく彼女に腹が立つ。
ずっとそうやって塞ぎ込んでればいい。
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んー(プロフ) - ukさん» 読んで下さり感謝です！私も終わらせてしまうの寂しくて葛藤しながら執筆してましたw泣いて下さったの嬉しいですー！自分で読み返しても「これ…切ないか…？」となってしまうのでw続編希望嬉しいです！短編集になりそうですがよろしければお付き合いください♪ (2021年7月2日 19時) (
レス) id: d739c5af4f (このIDを非表示/違反報告)
uk(プロフ) - 読み終わってしまうのが寂しくてちまちま読んでおりましたw53話辺りからずっと胸が締め付けられ泣きながら最後まで読みました。結果的にゴールインへのアシスしてくれたメイクヌナありがとうw私も続編を希望しております！！素敵な時間をありがとうございました。 (2021年7月2日 17時) (レス) id: 7eeed36c19 (このIDを非表示/違反報告)
んー(プロフ) - 虹猫さん» ありがとうございます！嬉しいですー！続編考えてみますね！いつか上げたら読んでいただけると嬉しいです！ (2021年7月2日 8時) (レス) id: d739c5af4f (このIDを非表示/違反報告)
虹猫(プロフ) - 好き過ぎて何回も読んでます！！続編楽しみにしてます！ (2021年7月2日 7時) (レス) id: 226f17ac54 (このIDを非表示/違反報告)
んー(プロフ) - ユカさん» そのうちぽっと続編出すと思いますので、お待ちいただけたら幸いです！ (2021年6月30日 23時) (レス) id: d739c5af4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：んー
| 作成日時：2021年6月25日 16時
