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タクシー会社から連絡があって、鈴木さんは帰っていった。



寝室を覗くと、広臣くんはさっきの格好のまま寝ている。
思いもかけず久しぶりに会えて、嬉しくて隣に潜り込んだ。



『お酒くさい…』



お酒が弱い私は、その臭いで酔ってしまいそうだから、泣く泣くリビングに戻ってソファーに寝転んだ。




翌朝の早い時間、少し寒くて目が覚めた。


広臣くん、お仕事かな?
私は休みだけど…。

もぞもぞと起き上がって寝室のドアを開けると、ちょうど広臣くんも目覚めたところみたいで、私の顔を見て驚いている。




『A?なにしてんの?』



『覚えてないの?』



『んー、うん』




ゆっくり起き上がった広臣くんの側に寄って
昨日、岩田さんから電話があったこと
一緒にいた鈴木さんに運んでもらった事を説明した。



『あー、ノブに会ったんだ』



『…うん。』



広臣くんは、眉間に皺を寄せて小さく舌打ちをした。



『断れば良かったね。ごめんね』



『まぁ仕方ねぇーな。俺が悪いし』



広臣くんは、私の頭をくしゃくしゃっと撫でてから立ち上がり浴室に消えていった。



そう。
私が広臣くんの彼女だということは、たぶん岩田さんしか知らない。
それも、紹介してもらったわけじゃなくて
私が広臣くんの家に来ていた時に、たまたま岩田さんが訪ねてきて
正直、バレたという方が正しい。



広臣くんがメンバーさんに私を紹介しない事を、寂しく思ったりしたことはないよ?
寧ろ、私は今の方がいいと思ってる。
私は、広臣くんと違う世界で生きているし
広臣くんがいてくれるだけで十分だからね。



『A、今日休みなの?』




『うん。だって、日曜日じゃん』



『そっか…俺、今から仕事だけど、どうする?
ここで待っとく?』



『ううん。お洗濯したら帰るよ』



黙って頷いて着替えに行く広臣くんの背中を見つめて、気付かれないように小さくため息をついた。


ここに居てもいい時は、待っててって言ってくれるもん。
どうする?って事は、帰れって事。



2ヶ月ぶりなのになって思いながら、カフェオレを淹れるためにキッチンに立った。

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作者名:花梨 | 作成日時:2019年1月30日 20時

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