すきなひと (ページ36)

今日:8 hit、昨日:3 hit、合計:80,870 hit

036 ページ36

暫く広臣くんは連絡してこないはず。
いつもそうだもん。
こういう事があった後は、いつも以上に連絡が来ないから。

だけど、今回はダメ
真っ直ぐ見つめて、好きだと伝えてくれたノブくんを想うと、早く広臣くんに会わなくちゃいけない。

広臣くん
少しでいいから
会える時間作ってください。

送ったメッセージは、半日後に既読が付いたけど、すぐに返事が返ってくる事はなかった。

明日の夜なら時間取れるよ
何時ぐらいに来れる？

広臣くんから連絡があったのは、私がメッセージを送ってから、２週間ほど経った頃だった。

広臣くんでいっぱいの、広臣くんの部屋に行く事が躊躇われて、私は初めて部屋に行く事を拒否した。

桜が綺麗だからお花見したいの。
明日、◯◯で待ってるね。

広臣くんからは、わかったって短い返事が返ってきた。

どうやって切り出そう
ずっと考えて、考えれば考えるほど、数少ない想い出に包まれて、結局眠れないまま夜が明けた。

仕事中も、頭の片隅でずっと考えていて
おかげでミスして怒られて
肩を落として待ち合わせ場所に向かった。

.

.

.

.
満開の桜の木の下に、広臣くんが立っていた。
あの頃より大きく、逞しくなった背中。
立っているだけで放たれるオーラ。

少し立ち止まって、大好きな彼を見つめた。

ねぇ、広臣くんは覚えてる？
付き合い始めた頃、バイトが終わるとこうしてショップの前の桜の木の下で待ち合わせをしたこと。

『広臣くん』

そっと近付いて声をかけると、あの頃と同じように振り向いて、ちょっとだけ笑ってくれるんだ。

あなたの事が好きすぎて
私はあなたの心の内を知ろうとしなかった。
それは、知りたくなかったから。
あなたが求めている女性は私じゃないって気付いていたから。