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お茶の準備をしていると、インターホンが鳴った。
玄関に出ようとするわたしを制して、ノブくんがスタスタと玄関に向かった。


何か話し声がしたけど、内容までは分からなくて、どうしていいのか迷いながらそっと名ばかりの廊下を覗き込む。
ノブくんの表情は見えないけど、岩田さんがものすごく険しい顔をしていて
でも、恐る恐る声をかけた。


『あの…狭いですけど、どうぞ』


『Aちゃん、こんばんは。お邪魔します』


ノブくんの横をスルリと抜けて岩田さんがリビングに入ってきた。


『あの…』


『今日、誕生日なんだってね。おめでとう。
これ、臣さんから預かって来たんだ。
ちょっと忙しくて会えないからって』


岩田さんが差し出したショッパーは、今私がつけているピアスと同じブランドの物だった。

視線を感じて、岩田さんのうしろを見ると、ノブくんが私をじっと見つめていた。


『わざわざありがとうございます』


『…はい』


岩田さんはショッパーを私に持たせようと更に差し出してきた。


『申し訳ないんですけど、これは受け取れません』


『どうして?』


どうして?って…
私が返事に困ると、ノブくんが私の隣に立って背中にそっと手を添えてくれた。


頑張れ


その手から、ノブくんの声が聞こえたような気がした。


『そんなの貰う理由がないからです。
それは、私が貰うべき物じゃないです。
岩田さんも知ってるでしょ?』



『報道のこと?あれは…何かの間違いじゃないかな?
仲のいい友達なんじゃない?』



『…私、知ってました。
広臣くんがMAIさんの事好きだって
電話してるの聞いちゃったんです』



重い空気が流れた。


『だから、これは広臣くんに返しておいてください。
私からも連絡しておきます』


『………そっか。分かった』



帰る岩田さんを玄関まで見送ると、振り返った岩田さんは真っ直ぐノブくんを見て言った。


『ノブ、順番間違えるなよ』

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作者名:花梨 | 作成日時:2019年1月30日 20時

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