すきなひと (ページ21)

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鈴木さんも決して暇な訳じゃない。

久しぶりに連絡があって、仕事帰りに会社の近くで待ち合わせた。

『久しぶり～』

私達はハイタッチをして歩き出す。

『先輩に美味しいとこ教えてもらったんだ』

『ほんとに？楽しみにぃー。どこ？』

『えっとねー、ここ！』

『え？ちょっとぉー、意地悪しないで！見えないよ』

背の高い鈴木さんが、自分の目線に合わせてスマホを見ている。
背の低い私には当然見えなくて、鈴木さんの腕を引っ張ったりピョンピョンと跳ねてみたり
私達は、こうしてふざけあえる関係になっていた。

周りから見れば、仲の良い恋人に見えたのだろう。
そんな事なんて、考えもしないで私達は笑っていた。

『Aちゃん、お鮨好きでしょ？』

『うんうん。大好き！鈴木さんも好き？』

連れて来てもらったお鮨屋さんのカウンターで鈴木さんの顔を覗き込んだ。

『そろそろ、その鈴木さんってやめようか？(笑)』

『え？』

『友達なのに、すっげぇ距離感じるもん』

『じゃあ……ノブくん！』

ノブくんは笑って頷いてくれた。

『はい！じゃあさっきの質問もう一回やり直し(笑)』

『えー、めんどくさいな(笑)
ノブくんもお鮨好きでしょ？』

『うん。嫌いなら連れてこないよね？(笑)』

『なんか今日のノブくん意地悪だから嫌い』

ちょっとめんどくさい女になってみたり
すると、ノブくんが慌ててごめんって笑って
大将にも「仲良いですね」ってからかわれて
二人で照れてしまって……

浮かれてた。

楽しく過ごせる友達が出来て浮かれてた。

数日後の夜遅く、そろそろベッドに入ろうとした私を、携帯の着信音がひき止めた。