貴方との毎日と君との毎日[Hiroomi] (ページ8)

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3.貴方との出逢い__you ページ8

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口元までマフラーに埋める、そんな季節。

仕事が休みの私は久々のショッピングに出かけていた。

両手に紙袋を持って街を歩いていると、ある黒いニット帽の男の人に目がいった。

お尻ポケットから携帯を取り出した拍子にシルバーの何かがポロンと彼の周りに転がる。

男の人は気にせず前へ進んでいってしまって、私は慌てて拾って後を追った。

どうやら、ごっつい指輪だったみたい。

それも、高そうな。

駆け足で彼の後ろまで行き、すみません、と声をかけた。

すると、マスクとニット帽の間の目が鋭く私を睨んだ。

感じの悪い人。

でもあれ…。

この人どこかで。

『指輪、落とされましたよ』

彼の前に手を広げて指輪を差し出す。

「え？」

彼はポケットに手を突っ込んで慌ててる様子。

私の手のひらの上にある指輪が自分のものだと理解した彼は私にありがとうございますと言った。

あぁ、この人登坂広臣だ。

ついこの間初めてのアリーナツアーを終えたばかりの三代目J Soul Brothersのボーカルだ。

「すごい大切なもので…。本当にありがとうございました」

感じ悪かったのはファンだと思ったのかな。

申し訳ないけど、私は貴方じゃなくてTAKAHIROさんのファンなの。

『いえ！よかったです、間に合って。』

LDHの番組を見てるから、それに彼が出てくる時もあって、だからそれなり知ってる。

『では失礼します』

軽く会釈して来た道を戻ろうと振り返ると、「あの！」って大きな声を彼が出した。

この人、バカなの？

『…もう少し声抑えた方がいいですよ。バレたら困るでしょう？』

「…俺のこと知ってるんですか？」

『まぁ…』

TAKAHIROさんのファンだということは隠しておこう。

面倒くさそうだから。

『で、なにか？』

引き止めたということは用件があるということよね？

「もしよかったらお礼にお茶でもどうですか？買い物の休憩にでも」

『いえ、お気にならさず』

そこら辺のすぐに付いていく貴方たちのファンと一緒にしないで。

確かに、貴方の先輩のファンだけど、そういうのはごめんだ。

自信に満ち溢れた顔に飽きれる。

たかが指輪拾ったくらいでお礼にお茶でもって…。

こうやって、何かと女を誘って落としていくんだろうな。

もう一度会釈して、今度こそ彼の前から去った。