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父親が家を捨てて出ていった後、行き来が自由になった姉は頻頻に家に来るようになり、男まで連れてくるようになった。
彼女の母親はどことなく病んでいて、姉は精神科に通うほどキレやすい病気である。
そんな彼女は5年我慢した。
彼女はおかしくなってしまった母親と自分勝手な家をホテル替わりのように使う姉と近くにいるのが耐えられなくなった。
そのとき、彼女は高校受験を控えていたため、これからの進路のことも考え、父親から突然来た連絡に甘えた。
父親から不倫相手の人と会って欲しいと。
その返事と一緒に今自分の過ごしている環境を話すと、すぐに一緒に暮らそうと言い始めた。
彼女はその家から逃げ、養子に入り、今の家族の形ができた。
父親と不倫相手との間には子供ができず、三人家族だ。
金銭面や環境は文句無し。
他人の手作りの夕飯。
彼女は有難かったと言っている。
でも、父親とは5年ぶりの再会であり、父親は実の父親であっても、今の母親は実の親でもなく元は不倫相手だ。
仲良くやっているつもりでも、彼女は心の中では大きな壁を作っている。
幸せな家族だったときの父親は、彼女が一番大切で一番大好きだったらしい。
でも、離れていた時間が長すぎて、父親の一番は不倫相手になってしまった。
彼女は楽しく過ごしていても、どこか居場所がないと思うようになった。
それでも、彼女が帰る場所は新しい家族のことろであり、他のところではない。
だから、寂しいも辛いも全部我慢しなければならない。
いつかの幸せを信じて我慢しよう。
そう思ったらしい。
「私が彼女と出会ったのは高校1年のときなので、それよりも前のことは彼女から聞きました。」
広臣「……」
「彼女の心が綺麗なのは、悲しい経験をたくさんしてきたからです。人は悲しい経験をしないと優しくなれません。」
彼女はそんな人生を送ってきたなんて、思ってもみなかったでしょう？
幸せな家庭に育ったように見えるでしょう？
「Aってすんごく美人なのに、ぜんぜん男っ気ないんです。寄ってくる人は変な人ばかり。痴漢や盗撮をされて、たまたま通りがかった私服の警察官が見つけて警察署にまで行った事あるんですよ。」
登坂さんがすごく苦しそうな顔をしている。
「Aは愛に冷めているんです。……いや、冷めていました」
広臣「…過去形？」
「今は登坂さんがいるでしょう？彼女が恋愛にこんなにも素直になっているところ見たことないんです」
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作者名：omigirl | 作成日時：2017年9月5日 0時
