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__コンコン
『失礼します』
ドアが空いた瞬間甘い香りが部屋いっぱいに広がった気がした。
黒いふんわりとしたワンピースを着て、腕に黒いファーのコートを掛けて、綺麗に巻かれた髪を揺らしている。
「お疲れ」
『…お疲れ様です』
裾から見える細い手首。
ワンピースから伸びる足。
ザワザワと胸が震えるような感覚。
その白い手に触れたい。
白い首筋に吸い付きたい。
会った早々、何考えてんだ俺…。
俺の向かいに腰を下ろし、さっそく指輪を返してくる君。
その素っ気なく、あっけない態度が気に食わない。
酒は今日は飲まないという君に、飲むように言う。
酒好きは飲めと言われたら飲むもんな。
1杯だけだなんて言うけれど、もっとたくさん飲ませて酔わせてやる。
酔わせてヤっちまおう。
体の関係さえ出来てしまえば、少なくとも今よりは距離が縮まるだろう？
なんでもいいから、君と近づきたい。
指輪をわざと置いてって、無理やり電話させて、酒を飲ませて、酔わせて。
そのやり方がどんなに汚くてもいい。
きっと、彼女も周りの女達と同じだろう。
きっと、すぐに堕ちるだろう。
いや、堕としてみせる。
その強気な瞳を崩してやる。
俺は君が好きだ。
だから、君も早く俺を好きになればいい。
『LDHの方って、本当にレモンサワー頼まれるんですね』
「え？…あぁ(笑)よく知ってんね」
『以前テレビで』
「そういうことね。」
そういえば、俺は彼女のことを何も知らない。
仕事も歳も、苗字すら知らない。
「名前、なんて言うの？」
『名前？登坂さんご存知ですよね？Aです』
「違うよ(笑)苗字！Aちゃんのこと、なんにも知らねぇなって」
『岩田Aです』
「岩田？」
『はい』
「岩ちゃんと同じだな」
『みたいですね(笑)』
クスッと笑う君。
やっぱり、笑うと可愛らしい。
歳は？と聞くとこれまた君は俺を驚かせた。
てっきり、同い年くらいかと思っていたから。
21って、大学生？
いや、それってどうなの？あり？
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作者名：omigirl | 作成日時：2017年9月5日 0時
