落花流水の情【放浪者】

diary.25 ページ27

Aside


草神様と空たちと別れて最近借り始めた新しい住まいへと戻る途中


私はここ最近あった出来事を思い返していた


パイモンに元気か？と聞かれて咄嗟に取り繕ってしまったけど


実はここの所そんなに元気ではなかった


原因は…教令院での出来事


『はぁ〜…、何がいけないんだろ』


つい口からぽろりと弱音が漏れる


教令院に入って数週間


周りを行き交う学生たちは皆楽しく雑談をしたり


己の研究課題や専攻科目について語り合っていたりと


とても有意義に過ごしている


そんな中


今だに友人が一人も出来ない私


【放浪者のお友達になってあげてね】


草神様の言葉を頭の中で反芻する


よく考えてみれば…


私に友人と呼べる人はいるのだろうか？


神子さまは断じて友人と呼べるお立場ではない


いやいやおこがましすぎるっ


一緒に鳴神大社で働いていた巫女達は先輩や同僚だし


空とパイモンは…友人と、呼んでいい？のかな？


『あああ〜！友達の作り方とかわからない！』


そう、そんな私に放浪者と友人になるなんてこと出来るのか？！


と、最近の教令院のひとりぼっち事件を思い返すと途端に不安になってくる


勉強するところだし、友人なんて！と開き直ったところで心の寂しさは埋まらない…


楽しくて充実した教令院ライフにはやはり友人という存在が必要不可欠なのだ


『ただいまぁ…』


明かりの消えた薄暗い部屋のドアを開けて中に入る


当然一人暮らしの部屋なので返事は返ってこない


これもこれで寂しいんだよな…


なんて思いながらまた肩を落とした


明かりをつけて机の上に散乱した教科書達を見つめる


スメールの歴史学文化と文明、


テイワットの成り立ち等々、ヴァフマナ学院生の学ぶべき科目


『それより友人の作り方入門、とかそういう教科書が欲しいよ…』


誰も聞き手がいない空間で


そんな理不尽な文句を吐き出す私なのであった

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