落花流水の情【放浪者】

diary.18 ページ20

放浪者side


勝手に人の人脈を増やそうとするなんて


やっぱり空はどこまでもお節介なやつだ


それにクラクサナリデビだって…


『……待って〜〜っ！！』


……幻聴だよな？


そう思いたかった


『放浪者くん！！ん？さん？』


歩き続ける僕の横を息を切らしながらついてくる女は…


『お〜い…、聞こえてる？？』


視界の横でチラチラと手を振ってくる女


ああもう、うざったい


僕は歩くのをやめにして風元素の力で移動することにした


すると当然、人の歩く力では限度があるわけで


『え？！速…っ！！待ってってば〜っ？！』


放浪者「どこまで追いかけてくるんだ…？」


鈍臭い割に足が速くて全力疾走してくる相手に僕も戸惑う


『あのね……っ、私、貴方と友達に……っんきゃ？！』


ズザザッという音につい後ろを振り向くと


女は自分の着物に足を引っ掛けて顔面から地面に向かって盛大にこけていた


『い、痛ぁ〜……ん、あれ………？』


顔を上げるとそいつの鼻からは血が流れ出ていて


自分で拭い取った手を見つめてギョッとした顔をしていた


男性「お、おい大丈夫か嬢ちゃん」


女性「どこかで洗ったほうがいいわよ！あ、ビマリスタンにでも…！」


『え？え？ま、待って私人を追いかけ……っ？！』


………本当に、自分に対して腹が立つ


こういう時に限って余計な世話を焼く自分に


これじゃ空と何も変わらないじゃないか…


街の人間たちに囲まれて顔面から血を出しても僕を追いかけようとしてくる阿呆者を


僕は雑に抱き抱えるとその場から離れた


ーーーーー


ーーー


ー


人の少ないシティの外れにやってきた僕は鈍臭女を降ろす


『やっと追いついたぁ！』


鼻血を出しながらもまだヘラヘラと笑う女に若干引く僕


放浪者「いいから、そのみっともない顔をどうにかしろ…！」


乱雑に手ぬぐいを渡すと女は何故かもっと笑う


『やっぱり…貴方って本当はすっごく優しいね！』


よく、素っ気ない態度を取られ続けた相手に


そんな屈託のない笑顔を向けられるものだ


くそ………、調子が狂う


『手ぬぐい、汚しちゃったから……あとで、かえ………う……？』


放浪者「……は？…ちょ、おい！」


さっきまでずっとアホ面で笑っていたから気づかなかったけど


大分鼻から血を出していたらしく顔が青くて


また顔面から地面に突っ伏すすんでのところで僕が咄嗟に受け止めたのだった

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