久恋10

475 omi ページ32

隆「臣、もう帰るの？」


帰り支度をしている俺に声をかけてきた隆二。


健「何かあったんか？」

「ん、ちょっと。」

岩「Aちゃん絡みですか？」

「んー、まぁ。」


これ以上話しかけられて、足止めされるのも面倒だ。


「お先に、失礼します。」


迅速に頭を下げて、控室を飛び出す。

マネージャーに送られて、マンション近くのコンビニで降ろしてもらった。

頼まれた物を買い、すぐに部屋へ向かう。


「ただいま。」

『おかえり。』


タイミング良くトイレから出て来たA。

心なしか青白い顔色をしている。


『うわっ。』


ひょいっとAを抱き上げて、リビングのソファーへ。


「大人しく寝とけって言ったでしょ。」


恐らく掃除や洗濯などをして、体を休ませていないことはすぐに分かった。


「まだ痛む？」


膝の上で大人しくしているAのお腹をそっと撫でる。


『広臣の手、温かいね。』


安心したように目を閉じて体を預けてきたので、近くにあったブランケットをかけた。


「このまま、少し寝るか？」


すでに腕の中では、すぅすぅ寝息がしている。

無防備な寝顔が愛おしくて、おでこに頬に唇に優しく口づけた。

そんな穏やかな時間が長く続くはずもなく、無粋なインターホンの音。


「はぁ〜、少しは二人きりにしてくれよ。」


Aを抱き上げて、ベッドへと運び寝かせた。

離れようとしたら、服を掴まれていることに気づく。

その行動が可愛くて、思わず笑いがこぼれる。


『・・・なに？』


目を覚ましたAが、不思議そうに俺を見上げてきた。


「んー、何でもない。誰か来たから、ちょっと見てくる。」

『沙耶ちゃんかな。広臣が帰って来る前に、LINEきてたし。』


そう言って、Aがゆっくりと体を起こす。


「無理するなよ。」

『うん、大丈夫。』


しつこく鳴っているインターホンに、少しイラつきながら玄関へ向かう。

ドアを開けると、お馴染みの顔ぶれ。


沙耶「すみません、大勢で押しかけて。Aさんの具合が悪いって、聞いたものですから。栄養のある物食べてもらおうと思って、材料持ってきました。」

「ありがとう。どうぞ、入って。」


お邪魔しまーすって、バタバタと入って行く岩ちゃんたちに大きな溜息しか出なかった。

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