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重い瞼には抗えず、
意識だけは手放さないようにした。
昨夜身を委ねたあの体温は既になくて、
そこにはまだ少しだけ温かいシーツだけ。
1つあくびをしてから瞼を開けると
開かれたカーテンからの光に思わず目を庇った。
ゆっくりとベッドを降り、服を着てから部屋を出ればちょうど目の前を彼が通りかかった。
「あ、A。俺もう仕事行かねーとだから鍵よろしく。」
歩きながら言う彼は、靴を履き振り返ると
私の手に合鍵を握らせた。
「なんだかんだで渡せてなかったからさ。」
そう言い、続けて“今度はAんちの合鍵貰うから、”
なんて言い微笑み、頭を撫で、優しく頬を撫でた後にキスを落とした。
「じゃ、行ってきまーす。」
「……行ってらっしゃい。」
「んな照れんなって 笑」
照れてないし、なんて反論する間もなく広臣は出て行った。
手の中に眠る合鍵をキュッと握りしめ
昨夜の広臣を思い出した。
昨日一瞬だけ見せた、切ないと言われるのだろう表情。
何を思って、何を感じたのだろう。
あまりに一瞬だったそれにいつまでも心を奪われる。
キッチンへ行くと、彼の乱雑な文字が白い紙に並べられていた。
それは、このマンションのセキュリティを通るためのモノ。
そんなにココに来てほしいのね。
「……素直に言えばいいのに。」
思わず、シンとした部屋で呟く。
素直に言えばいいなんて、私が言えることじゃない。
分かっているけれど、
広臣が理解していると感じてしまうと
ついつい素直になれなくて。
ホント、私って何なんだろう。
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作者名:PiG Bone | 作成日時:2017年10月24日 20時