愛しているから【短編集】 (ページ7)

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真月side

「…うわ、真月、本当ごめん。」
「まぁ、仕方ないよ。ヒートの時期ずれちゃったんだし。あとは…黙ってた私達もいけなかった。」

Aの頸にくっきりとついている歯形を無視して、首輪を付けた。

「…真月、後は頼んだ。」
「うん。坂田をよろしく。」

うらたが出て行ったのを見送り、Aの方を見ると少し目を開けていた。

「A、大丈夫？聞こえる？」
「…真月…私、あ、れ…？」

さぁっ、Aが自分の頸に触れた瞬間Aの顔が青くなる。

「やられたぁっ…」
「A…。」

医務室のシーツに涙の染みが出来た。好きでもないαと番になるなんて、最悪でしかない。私だったら嫌だ。死ぬことさえ視野に入れるだろう。

その時、扉からノック音がした。

Aをベッドの上に座らせてから許可を出すと、入ってきたのはうらたと萎んだ坂田だった。

「すみません…！」

うらさんがそっと耳打ちした。

「…今泣いて良いのはお前じゃない。」

分かってる。俺が今泣いて謝ったって、この過ちが消えることはない。1番この中で被害者なのは、悲しんでいるのは、苦しんでいるのはAだ。

顔を見られたくなくて深々と頭を下げる。

「坂田くん、顔上げてよ。」

その言葉が今の俺にとっては死刑宣告と同じようなものだった。

「…私、いつかは番を作ろうと思ってたんです。…見ず知らずの人に噛まれて責任を取られないより、知ってる人で、心の優しい貴方で良かったと思っている自分もいます。」

この世界でのバース性事故は、α、Ωどちらが責任を取るか問われることがない。つまりどちらか一方が悪くても罪を背負う必要は無いのだ。

「責任、とってもらいますよ？」

噛まれたΩとは思えない反応に、心底驚きを隠せなかった。責め立てられると思っていたから。

まるで小悪魔みたいな笑みを浮かべて、Aは俺を見つめた。