愛しているから【短編集】 (ページ21)

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注意・害悪さんが出てきます。

urt side

「坂田。」
「…あ、うらさん。」

力無く笑う坂田の顔は疲れ切っていた。

「お腹大丈夫か？」
「おかげさまで。」

刺された跡が痛むのか。未だ治らぬ傷跡を撫でていた。
そして、お決まりの言葉。

「なぁ、うらさん。Aは？」

…ほらな。
「まだ目覚ましてない。」

立てない状況で、Aのことを見に行けない坂田は毎回俺に聞いてくる。

実を言うと今回のAの事件は複雑だ。

Aには、ストーカーがいたらしい。
そのストーカーが坂田とAが付き合っていることを知り、AをSub drop、仲間が坂田には腹を突き刺した。

不幸中の幸いにもAには志麻・センラが偶然居合せ、すぐ来て救急車を呼ぶことができた。坂田に関しても俺の前、しかも人前だった為すぐに病院へ行くことができた。あと傷も浅かった。

あのストーカー、害悪の坂田家とも連携していた。
ストーカーと害悪は警察にお縄。ストーカーは結局Aのリスナー、リアコが変に曲がってしまったタイプだった。

この件についてはまだ公表していない。坂田とAは体調不良だということになっている。

「はよ、配信もしたいなぁ…」

俺もだが、坂田はAと同じくらいにファンが、この活動が大好きだ。

大体俺が来るとAについてか、活動の心配しかしない。

「Aは、つよいから…。
そう簡単には死なんよ。」

俺に言っているのか、自分に聞かせているのか。
いや、後者だろう。

「…会いたい。」

坂田の口から初めて出た要望だった。

病院食がまずいからご飯買ってきて、とか言い出すかと思っていたのに。

自分のパートナーに会えないのは、Domにとっても辛いこと。ましてやAを溺愛していた坂田だ。逆になぜ今まで言わなかったのか不思議だった。

「うらさんは自分のパートナーに拒絶されたこと、ある？」

ふと聞かれた質問に対して俺は少し悩んでから口を開いた。

「ある。」
「何があったん？」

ちょっとした喧嘩だった。俺のパートナーは可愛いけどSubのくせに強がりだったから。同棲してると相手に似ると聞いたことがあったが本当らしい。彼女は負けず嫌いで、俺限定の甘え下手。

そう、本当にちょっとした喧嘩…だった。