愛しているから【短編集】 (ページ13)

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「はーっ、はぁ…」
「A、大丈夫…じゃないか。」
「最悪…、ヒート誘発した…。」

先月にあったばかりのヒートを誘発した私の身体は言うことを聞かない。番になったΩとはいえ、番のαのラットに当てられれば誘発する。

足に力が入らず、床に座り込んでしまった。

そんな弱った私を初めて見たからか。優輝と瑞咲は痛みが引いたはずだが、また泣き出してしまった。

「ままぁ」
「だいじょぶ…？」

双子だからか2人はいつも言葉を分け合うように話す。自分達も大好きな父親から急に突き飛ばされて怖いはずなのに、真っ先に母親の心配をするところが優しい。

「大丈夫だよ…。2人は怪我ない？」
『うん。』

未だ止まらない涙を何度も拭う2人を見て、紗奈は言った。

「ねぇ、今日は優輝と瑞咲うちで預かろうか？」
「悪いよ…流石に。千紗もいるんだし。」
「2人増えようが３人増えようが関係ないから。大丈夫大丈夫。向き合いなよ。坂田(あいつ)とさ。」

リーダー命令ね。なんて言った紗奈は優輝と瑞咲の頭を撫でた。何年経ってもこの人は私達のリーダーのようだ。敵わない。

「ありがとう…じゃあ甘えるね。」
「そうそう。優輝、もうママがいなくても寝れるよね？」
「できる！」
「瑞咲は？」
「ちょっとこわいけど、ちさちゃんとゆうきがいるからできる」

2人の頭を撫でた紗奈は「優輝と瑞咲の服適当に持っていくね〜」と言うと、瑞咲と優輝のお出かけ用カバンに着替えをいれた。

するとノック音が鳴る。

「なぁ、坂田落ち着いたみたいやから、自分からシャワー浴びに行ったんやけど…。」
「あ、絶対センラ部屋入らないで。」

紗奈が止めてくれたおかげでセンラくんはドアノブに手をかけることはなかった。

「ありがとう…」

けれど何故彼はラットになっているんだ。
αはΩのヒートにじゃないとラットにはならない。まさかとは思うが、彼に限って浮気はないだろう。