花の都の真ん中で第7幕 (ページ34)

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苦悩（Ys16目線）ページ34

お店を後にし、Aを追い掛ける。

しばらく歩いて、交差点に来た所で、彼女の左腕を掴んだ。

『えっ…樹理、どうして！？』

驚いたと同時に、困惑したような顔の彼女。

俺の手は、かすかに震えていた。

「ちょっと来てや」

『ねぇ…どこ行くの！？』

戸惑っている彼女の手を引き、駐車場を目指して歩き出す。

何となく、誘拐してるような状態になってしまった。

助手席に彼女を乗せ、車のキーを差し込み、エンジンを入れる。

とりあえず、俺の家を目指す事にしよう。

しばらく走って、ようやくマンションに到着。

立体駐車場に車を収めて、オートロックを抜け、エレベーターで16階へ。

廊下の奥の角部屋が、俺の家。

周りに誰もいないのを確かめ、鍵を閉める。

それからすぐ、Aを力一杯抱き締める。

でも、なぜかやっぱり、手は震えてしまう。

『ねぇ…樹理どうしたの！？』

怯えたような声で、彼女は尋ねた。

それからすぐ、俺の頬を一筋の涙が伝っていくのが分かった。

「…狂おしくなる位、Aを愛してるんや―――」

心の中で叫びを上げながら、彼女を抱き締め続けた。