今夜だけは（Ys16目線） ページ23
風呂から上がると、自販機前のベンチに腰掛ける、Aの姿。
浴衣を着とるというだけで、妙に色っぽい。
「おぅA、お疲れさん」
『樹理も、お疲れ様』
隣に並んで、一緒に座る。
お湯で温まって、ポッと上気したような紅い頬。
色白なので、一層可愛らしく見える。
鎖骨の下辺りまである髪は、まさしく緑の黒髪。
艶もあるし、手触りもサラサラ。
そして、穏やかで優しい、カモミールの香り。
出来る事なら、ずっとクンクンしたくなる香りや。
すると、Aがポツリと呟いた。
『自主トレ、終わっちゃうね』
少し、寂しそうに笑った彼女。
みんなで一緒に過ごすのも、今日が最後や。
俺も、正直めっちゃ名残惜しい。
『あっという間に、キャンプだね』
「Aと翔太は、宮崎やったっけ？」
『そうだよ、樹理達は浦添だよね？』
キャンプ地も、別々。
練習試合でもしない限り、他のチームと会う事は無い。
恐らく、今年はオープン戦まで会えへん。
いや、下手したら交流戦まで会えないかも知れへん。
「沖縄やから、なかなか暑いねん笑」
『宮崎も、わりかし暖かいよ！笑
あと翔太が、地鶏の美味しいお店に連れてってくれる笑』
「ええなぁ〜、宮崎地鶏…」
『翔太の地元だから笑』
「A、食いしん坊やなぁ笑」
『食べないと、元気出ないもん！』
「人一倍、食べてたもんな笑」
あれだけ食べても細いとか、あかんやろ。
『ねぇ樹理』
「どうしたん？」
『呼んだだけ笑』
「おいおい笑」
そして、ただただ可愛い。
「…A」
『はい？』
「今夜は、俺と一緒にいてくれへん？」
思わず、言ってもうた。
『へっ！？』
鳩が豆鉄砲を食らったような顔の、A。
「神様に誓って、何もせえへんから」
『言ったね？』
「男に、二言は無いで」
『じゃあ、準備だけするから、一旦戻るね』
部屋に戻る、Aを見送る。
あかん、心臓が持たんわ…
しばらく経って、俺も部屋に戻った。
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作者名：ゆみぃ | 作成日時：2019年2月15日 20時
