不登校ちゃんと闇深優等生ちゃん「オリジナル」 (ページ39)

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「劇？」

私は桜にそう返す。

私は、しばらく部活休止をしている時だった。

桜から、提出物。と渡された紙には「定期演奏会アンケート」と書かれていた。

「そ。なんか、４月の定期演奏会の時もそうだったけど、劇をやるんだって。」

「へー…吹奏楽部なのに？」

「うん。私見に行ったことあるからわかるけど、結構すごいよ！」

「ふーん…」

私は、自分のやりたい係というものをじっくりと見る。

確かに、劇キャストという選択肢が乗っている。

桜と二人っきりの薄暗い教室。

自分のペンケースから、シャーペンを取り出す。

桜が何にチェックするのかと興味深そうに見てくる。

「…っしょ」

私は迷わず、劇キャストと照明とプログラムに丸を付ける。

「…へぇ、即決？」

「まあ…」

「瑠璃、演技好きだもんね。」

私が名前を書いて渡すと、ありがと！と言われ、そのまま先生に出すの今日までだから！

と、走って教室を出られてしまった。

「嵐みたい・・」

ぽつりと出る独り言。

その言葉を無視するように私はリュックを背負い、教室を出た。

道路は薄暗い。

木々がまるで私の道を邪魔するように濃い色の影を作る。

＿＿私をどこかへやるように。

私は劇が好きだった。

大嫌いな体育祭とは違って、発表会は毎回楽しみだった。

演劇は私にとって救いみたいなもんで、私はひたすらにほかの人になることで、私の感情じゃ処理しきれないものを押し付けることができた。

演技には決まりはないけど正解はある。

それ通りに私はただ、台本に書かれている言葉を並べる。

誰かの気持ちを想像してその通りに動いて、したら、誰かになれてる気がする。

私が、いつも演じている優等生よりもっといいもの。

私にとっての演じる。は本の中への感情移入とイコールで並んでいた。

＿＿でもだからと言って私は女優になる気はさらさらなかった。

ただの、趣味。

私が私を隠す、ただの趣味だ。

そうすれば、誰かに見つけてもらえる気がして…

空が雲に覆われていく。

風が強くなる。

「誰かに、見つけてもらおうって…？」

雨が降り出す。

大きくて強い雨。

体に触れるたびに冷たさが伝わる。

なぜか心地よくて立ち止まる。

「なんて、傲慢な考えなんだろう。」

傘を差さずに下を向いて歩いた。

帰りのあと５００メートルを。