20 ページ24
「わぁ〜、やっぱりこの声がいいんだよぉ〜」
一人っきりの部屋の中に響く私の声。
私、山崎咲来は見た目からか何からなのか知らないが、優等生と思われるため誤認されることがあるが、アニメ大好きなオタクである。
今日の今の今だって、アニメや映画の音声を録音したものを聞いている最中だからだ。
コンコン。
木製のドアが柔らかい音を立てた。
「なにー？」
「咲来〜、勉強は順調？」
お母さんが入ってきて私は急いでプレイヤーを隠し、勉強していた風に見せる。
「うんっ、地区大会前にほとんど終わらせられそう。」
そう聞くとお母さんは安どしたように柔らかい表情になった。
「そう、よかった。咲来は頭がいいもの、咲来なら心配ないわよね。」
そう続ける。お母さんの目線には何があるのだろうか。
私がとった賞状、生徒会支部委員会のバッチがついた制服、
「邪魔してごめんね、用件はそれだけだから…あっ、今日のご飯何がいいか考えといてね〜！」
そう言って、お母さんは私の部屋を出た。
バタンと扉が閉まる音がした。
不思議なもので一人っきりになった合図のその音は何か冷たさを感じる音だった。
「頑張らなきゃ、」
私はプレイヤーをしまい、勉強をする格好になった。
「私はっ期待、されてるんだからっ」
課題にシャーペンを向かわせる。
いつから、こうなってしまったんだろう。
最初は勉強なんてなんとなくやっていた。
小さいころからだった小さなプリントでもテストでも満点を取ればほめてくれた。
詩や作文のコンクールでもらった賞状を見ても。
でも、それがいつからか期待に代わってしまったんだ。
…期待、苦しかった。逃げたかった。
「いい子」になるには才能が必要だってお母さんは言った。
私には「いい子」になる才能があるといった。
それが賞状やあなたのお友達がいう「ありがとう」や「さすがだね」に隠れていると
それをお母さんが見つけたから、私の「いい子」の「才能」を伸ばすために応援してくれると。
この苦しみの連鎖から抜け出したかった。
一回でも賞状をもらうほどの功績を残さなければいいと。
でも、そんなことはなくて…毎回ただの紙切れと期待を交換する作業をするばっかりだった。
「才能なんかなかったらよかった。『いい子の才能』なんてっ＿＿＿」
たぶん、私のこれはただの傲慢だと思うしほしくても手に入れれない人がいることも知ってる。
でも…でもっ
「誰かっ、私のいらない才能を受け取ってよ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こんわた | 作成日時：2023年8月24日 18時
