プロローグ ページ2
「雪ちゃん、今日は学校これたんだ。よかったぁ。」
そうやって、多めに息をつく。
「う、うん。瑠璃ちゃんがいるからだよ。」
背は私と同じぐらい、でも外に出ないから色は私より白い。
人から隠れるように、周りをちらちら見ながら、心配げに、席に座る彼女。
あの子は、不登校だ。
5月の日、みんなは、部活に慣れて、教室にも慣れて、中学校に慣れ切るころだけど、
まだ、中学校への登校日数が数日の彼女にはたぶん、まだ、怖い場所。
雪ちゃんと出会ったのは、四年生のころだった。
〜〜数年前〜〜
新しいクラス。
自分のランドセルのにおいなんて気にしたことなかったけど、その匂いが唯一安心できるのは、このクラスに慣れないから。
「瑠璃ちゃんじゃん、おんなじクラスだ。」
「あっ…さやのちゃん。」
活発天然で頭がいいさやのちゃん。
去年一緒なクラスだったし、近いグループだったけど私なんておまけ程度で、あまり話したことはなかった。
ロッカーに、ふと、慣れない名前が書いてあった。
それを、じっと、凝視する。
四季 雪
「知らない人だー、転校生?」
「私もよくわからない?ゆきちゃん?」
みんなが席に着いた頃、ドアが開き、先生と一緒に入ってくる転校生。
かわいい顔。
そう思った。
もたもたとしながら、黒板の前に立つ。
「わ、わたしは、よんき、ゆいですっ」
そう言い切った彼女は、私の近くの席に座った。
なんだかわからないけど‥運命を感じた気がして、すぐ話しかけた。
幸いにも、私は優等生だったから。
先生から
「じゃあ、いろいろなことは、席も近いし清川に聞くといい。」
なんて、言われちゃったし・・・っ
「雪ってかいて、ゆいって読むんだね。」
「う、うん。わたし…この名前お母さんにつけてもらったの。ゆきだと、そのまますぎるから…」
そういって、自分の名前を大切にするように笑った雪ちゃんの笑顔がまぶしすぎた。
不登校になってしまったのは、4年生の10月近くだった。
なにが、いけなかったのか。
不安でいっぱいだった。
私が苦しめてたかもしれない、実は、何か起こっていて私が気づけなかっただけかもしれない。
もし、そうなら、雪ちゃんに会う資格なんてない。
そう思って、たぶん、笑顔があいまいになる日もありながらもどうにか関係を保ち続けていた。
そして…6年生になるころ彼女は完全な不登校になっていた。
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作者名:こんわた | 作成日時:2023年8月24日 18時