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「…ファンの前に行くのが…怖い…、いつこれが終わっちゃうのか…」
「そうじゃないでしょ。」
「……そうじゃないって」
「E-girlsとかFlowerじゃない自分には価値がないって思ってるんじゃないの？」
.
緊張で固くなっていた手に
汗が滲んでいた。
なんで彼はこんなに
弱いところを突いてくるんだろう
.
「…そんなこと…」
「完璧でいつづけようとするのはいいと思うけど、でも力入りすぎてない？」
「……そうかな…」
「うん」と彼は笑った。
「頑張り過ぎだよ」
「そんなこと…ないのに…」
「Flower のAっていう以前に、AAっていう1人の人間だから。自分のこと、許してあげてよ」
胸が苦しくなった。
嗚咽がもれ、吐く息が熱く、目を閉じて机に突っ伏した。
「……樹くん…っ」
「分かった？」
「……うん…、」
顔を上げると、そのまま崩れ落ちそうになるくらい、全身から力が抜けた。腕に力をいれて上体を起こし、鏡の自分を見た。
「…樹くん…」
「なに？」
「明日…会える？」
「Mステがあるから、時間が合えば会えるかもね。」
「…会いたい…」
「うん。たぶんね」
「今も…」
「…ライブ、集中しな」
「うん…けど、会いたい…」
「ほら…そういうこと言わない。ちゃんと集中して」
開演まであと少し
アップに行っていたメンバーも楽屋に戻ってきて最終確認をしてる。
私も滲んだアイラインとラメを直して
慌てて立ち上がった。
早く、ファンのところへ行って、
物語を紡いでいかなきゃいけない。
でも、Flowerとしての自分になるまえに、ただの女の子の自分が、彼を求めてた。
「…頑張るから、明日はいっぱい樹くんに甘えてもいい…？」
「だめ」
「えっ…」
「嘘。いいよ」
彼の笑い声は甘く、私は今度こそ全身から力が抜けて、しゃがみこんだ。
開演15分前
大きく息を吐いた。
本公演ラスト
Flower としてあと何回、ステージに立てるのだろうかとか
いつまでこの景色を見つづけられるのだろうかとか
そういうのは胸にしまった。
“『Flowerじゃない自分には価値がないって思ってるんじゃないの？』”
白い衣装の前のボタンを留めて
伸びたロングの髪の毛を整えて
楽屋を出た。
“『自分のこと、許してあげてよ』”
2年前が、蘇って
“『…なんか……笑い方、変わったね』”
終わってほしくない
でも
もう戻りたくない
瞳をとじて、天井を仰ぎ、それから息を吐いた。
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蘭の花(プロフ) - あーぴさん» ありがとうございます！わたしもそう思いながら書いているのですが…頑張ります涙(TT) (2020年7月4日 19時) (
レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - もあさん» このあとの二人がどうなっていくのか、ぜひお楽しみに。(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - Ailisさん» 別れるのか一緒にいるのか、どんな選択をするのか見守っていて下さい(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - はなさん» いったい二人はどうなってしまうのでしょうか。お楽しみに(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - ゆずさん» 本当に究極の選択ですよね。好き同士だけどそれだけじゃだめという現実が辛いです(TT) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭の花
| 作成日時：2019年11月16日 21時
