病弱少女は八乙女楽の想い人で、逢坂壮五の妹です！！２ (ページ8)

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夢と、最悪な電話ページ8

もしー
親御さんに認めてもらったら、さ。
Aの曲、俺たちに、TRIGGERに歌わせてくれ。俺らの、専属ソングライターになってほしい」
『父の説得、時間がかかると思う・・・・・』
「待っててやるよ、いつまでも」
想像してみた。俺と天と龍が歌うAの書いた曲をステージでファンに聴いてもらうのを。きっと、今まで一番楽しめるだろう。
『そうなったら、いいね。じゃあ、楽。また、今度ね』
「悪かったな、長居して。またな」
ドアを開けて、車に乗り込む。そして俺は、機嫌よく家に帰った。天のヤキモチ混じりの説教が待っているとも知らずに。
そして、ずっと後に、
Aがあそこまでパニックになったときに芽生えた不信を、あのときどうして放っておいたのか、後悔するとも知らずに。

NOside
機嫌良く帰る楽の車をスコープで追う人影が一つ。その人物は、苦笑して耳からイヤホンを引き抜き、ため息をついた。
「とんでもない夢をあいつに魅せたな、八乙女楽」
たぶん泣かせたぞ？とおどけたような口調で、
言って、夜風に吹かれる。しばらくして、冷え切った目で、スマホをタップした。
ー今からどん底に突き落とさなきゃいけないってのに、タイミングが悪すぎるー

楽が帰った後。ソファーに顔をふせて泣いた。
楽の言った夢。叶えばどんなに素敵だろう。
でも説得は不可能だ。FSCトップで私達の父、逢坂壮司は音楽なんてくだらないって平気で言う人だから。どうしようもない想いに任せて、泣いて、泣き疲れた頃。電話がきた。
【from 零雲】旅の話なら気分も晴れるんだけど、嫌な予感しかしない。そして、
『もしもし、零雲？』
《わりぃ。そんなときに。壮五の素性が調べられてる。俺1人じゃ手に負えない。隠すの手伝え、これは会長から》
悪い予感は、よく当たる。
盗聴(きか)れたか。父さんから頼まれてか？いや、あの人が私なんかに今更興味持つわけない。どっちにしろ、しばらく連絡控えた方がいいかも。それはさておき、零雲が手こずっている？
『珍しい。相手は？』
零波は逢坂の警護役を代々勤めてる訳じゃなく、企業秘密の隠蔽から産業スパイまでこなすし、零雲は次期当主候補、つまりトップレベルの腕なのに。
《落ち着いて聞け。八乙女プロの社長。分かってると思うけど、お前がさっき、楽しげに飯食ってたヤツの親父だよ。壮五と環を引き抜く気だ》
電話を切って、呼吸の仕方を思い出しながら、一度大きく深呼吸する。
『最悪にも程がある・・』