病弱少女は八乙女楽の想い人で、逢坂壮五の妹です！！２ (ページ34)

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凍える夏の秘密ページ34

零亜side
『うん、うん！私もこれから仕事。楽も頑張って！』
楽しげに電話をするAに、こっちも頬が緩む。
今日、トリガーの新曲が発表されるらしい。
私も楽しみだ。
今日は仕事も少ないし、可愛い妹分は楽しめるだろう。

そう、朝は思っていたのに。

『れいあ…… これ、さぁ……』
震える声に、動揺を返すことは私自身が許せない。無理矢理に冷静な声を絞り出す。

「えぇ、アイドリッシュセブンの、デビュー曲になるはずだったものよ」

嘘や慰めなんて口にした瞬間に、私は部屋どころか家から出ていかされるだろう。そして、これまでのような接し方は二度と許されなくなる。

私の返事に一呼吸空いて、冷徹な少し震える声が響いた。

『……そう。すぐに、零雲を呼んでちょうだい。』

　「で、俺は何をしたらいい？そいつがアイドリッシュセブンのだって知ってる奴をやっとくか？それとも、真相の究明？」

『後者だ。直接彼らが関わっているとは考えられない。裏方の仕業だろう。社長か、作曲家か、どちらかが濃厚だな。金は私の方から出す。徹底的に調べてくれ』

兄さんが着く頃には、すっかり仕事の顔になっていた。逢坂の血、なのだろうか。
この兄妹の、手段を選ばない所は。
もちろん、口には出さないけれど、どうしても思う自分が嫌になる。

私の方はーーあの人に連絡をするべきだろうか？
目を閉じて思い浮かべるのは、自分の主人によく似た、双葉が揺れる青年。
それだけで、私の心を千々に裂こうとする、ズルいぐらいに綺麗で、何よりも澄み切った真っ直ぐな人。

そうして、自分勝手に、この夏を誰にも知られないよう凍りつかそうと、決意を決めた。