おもいきり抱きしめよう ページ33
「……着いた！」
しばらく早歩きをして、楽が声をあげたのは見晴らしの良い高台。お祭りも夜景になるんだなぁ、なんて考えてしまう。
「龍の弟達に教えてもらった。良いところだよな。ん、そろそろだ。A、上見てみろよ」
言われたとおりに空を仰ぐと、 花が咲いていた。
『花火……！！ 凄い、今までみた中で、一番キラキラしてる！！』
このドォンと響く音も初めて。
煙があるから。 何かあったら自分達の不利益になるから。 そう言って、今まで見させられたのは、何も聞こえない防音ガラスからの絵みたいなものだった。
「だろ？ お前、こういうのキラキラしたもの好きみたいだったからさ。見せたくて」
そして、こんなふうに私のためを想ってくれる人も、いなかった。 兄さんと、叔父さんを除いて。
少し、うるんだ世界は、嬉しさのせいにする。
だって、本当に、今は幸せだから。
楽side
感動したのか、涙ぐんでいるAの横顔を見つめる。 護りたいと、強く思った。そして、そろそろ言わないといけない。 この祭りに来たのは、俺のためでもあるから。
震える手を握りしめて、声をかけた。
「なぁ、A。 話が、あるんだ」
一度、大きく息を吸う。
「お前が好きだ。いや、好きじゃない。
愛してるぜ。世界が滅んでも、俺が死んでも、お前だけを永遠に」
天side
あいつ…… 恥ずかしくないの？！
「この前も思ったのですが、八乙女さん、羞恥心をどこかに置き忘れたのでは……」
「一織、言い過ぎ！！ まぁ、でも、なんだ。あれぐらいギザれる勇気がないと、現代では勝ち残れないんじゃないか？」
「にしても、良くあんな台詞をカメラ回ってないのに言えるよな。あー、なんだろ、返事聞いてないってのに、お兄さん夏バテしそう……」
「ミツキ、私もあんなふうに言えますよ」
「ナギ、すごいじゃん！！にしても、映画のワンシーンみたいだ……！」
「りっくん。感心するとこかよ、それ。 龍アニキ、どしたの、黙りこんで」
「アイドリッシュセブンの皆を否定できない……」
僕もだよ、龍。
楽達の後をつけていたら、陸達と合流した。
もちろん、僕と双子ってことは、ばらさない。
そのまま一緒に、あの台詞を聞いた。
ここ静かだから、わりと声が通る。もちろん僕らは小声だけど。
会話を止めて、あの子の返事に耳を澄ませる。
何故だか風が響いて聞こえなかったけど、楽が彼女を思いきり抱きしめたことで、どっちかは分かるよね？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アスト | 作者ホームページ：http://id11.fm-p.jp/545/05251357/
作成日時：2016年9月27日 18時
