監督生がオクタヴィネルに囲われる話 (ページ1)

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逃げる、捕まえる、逃げる。この動作は、基本的にエンドレスだ。

例えば、大悪党が優秀な警察官に捕まったとしても、すぐに逃げる手立てを考え、必ず脱走する。
つまり人間は、捕まえられたら逃げたくなる。
そんな哀れな生き物なんだろう。

隠れ場所もなく、まるで行くあてのないはぐれた稚魚のように、外廊下を全速力で走る。
本来、ナイトレイブンカレッジ、略してNRCの生徒は強力な魔法を持って入学する。

けれど、それは自分というただの人間を除いての話だ。魔法があれば、瞬間移動なり、後ろから迫る捕食者とも呼べる彼を撃つ事も出来る。

こちらの世界に来て早三ヶ月。青春を謳歌しようと息巻いていたあの頃の自分に一発焼きを入れたい。

まず一つ。面倒ごとには首を突っ込むな。
そして二つ。"オクタヴィネルの生徒とは絶対に交流を持つな。"だ。
そう、現に私はオクタヴィネルの生徒に恐怖感を抱いている。

「小～エ～ビ～ちゃんっ、アハッつーかまえた♡」

フロイド・リーチ。この自分が最も危険視する、いわゆる"サイコパス"のような男だ。

普段から、悪い意味でふわふわとしていて真意が読み取れず、おまけに飽き性だ。
そんな彼とは距離を置き、平穏に暮らそうとしていた。

が、それが叶うことは無かった。
どうやら神様はこちらに味方することは無く、オクタヴィネルの寮生…特に、オクタヴィネルを取り仕切っている三人は自分の事を気に入り、現に囲おうとしている。

「っ、なんですか、フロイド先輩！離してください！自分は貴方の玩具じゃないです…！」

「は？今日はオレが小エビちゃんと遊ぶ番だし。
良いから黙って来いよ。」

ワントーン下がった、ブラックコーヒーのような声で明らかに不機嫌そうに言葉を並べる彼。
"今日はオレが小エビちゃんと遊ぶ番"
夜な夜なやっているあの行為を遊びと言う彼らは、きっともう異常者なんだろう。

自分が、もう少し強ければ抗えたかも知れない。
いや、抗えたはずだ。だが、こんなにも自分は弱い。
現に、この気の抜けたようなお遊び同然の鬼ごっこでもいとも容易に捕まっている。

「ねーぇ、早くしてくんない？オレ、そんな気ぃ長くないんだけど？」

"今にも人一人殺してしまいそうな形相の彼にこんな弱い自分が勝てるわけもない。"
そう悟り、ゆっくりと彼に身を委ねた。

「アハッ、小エビちゃんいい子いい子♡」

あぁ、今日も自分は遊ばれてしまうのか。